木津川市鹿背山(かせやま)で、祖父の代から彫刻を営む一家に生まれた水島太郎さん。それぞれ偉大な功績をもつ祖父と父の存在を身近に感じながら、20代で渡仏して画家のマーク・エステル氏のアトリエでも制作活動を行いました。
天平時代の仏像彫刻に多用され、父の石根さんがその復活に尽力した脱活乾漆(だっかつかんしつ)技法は、漆と麻を使った彫刻表現の一つ。粘土で大まかな形を作り、その上に漆と砥粉(とのこ)を混ぜて塗り込んだ麻布を貼り付けて乾燥させ、乾ききったら中の粘土を取り出し完成。奈良・興福寺の「阿修羅像」でも使われているこの技法に可能性を見いだし、現代彫刻における新たな展開を目指して活動されています。

(記事執筆:西尾晶子(京都府地域アートマネージャー・山城地域担当))

このヒトをシェア

MESSAGE

クリエイターの声(地域の魅力)

鹿背山周辺は宅地開発が進み、木津川市全体でも子育て世帯など人口が増加する中で、とんど焼きや虫送り(田植えの頃に害虫が米に付かないことを祈る行事)などの古い行事が今も大切に行われています。交通の拠点としても滋賀や奈良、大阪、京都との行き来がしやすく、文化的に影響を与え合うところもこの地域の魅力だと思います。

推薦者から一言

西尾晶子
京都府地域アートマネージャー・山城地域担当

水島家の敷地に足を踏み入れると、庭先にも家の中にも、大小の絵や彫刻が至るところにあり、まるで美術館に来たような印象を受けました。お祖父さまの代から仏像彫刻に触れてきた東洋のルーツと、ご自身がフランスで学ばれた西洋のエッセンスが不思議に混ざり合った脱活乾漆技法の作品やその世界観に魅了されます。

WORKS 活動紹介

脱活乾漆技法で作られた《猫》

漆に砥粉と水を混ぜてパテ状にし麻布に塗り込み、この麻布を粘土で作った原型に貼り付けて作品の形状を作っていきます。

作品が並ぶギャラリー兼アトリエ

奈良・東大寺で毎年二月に行われる修二会に童子としても参籠し、現代とはかけ離れた生活スタイルを体験する中で大きなインスピレーションを受けるそうです。

中国の磁器の産地・景徳鎮で作られた金の《桃》