SHINNO Hiroshi 新野洋

南山城村田山中シヨジ

田山生涯学習センター(旧田山小学校)内

京都府生まれ、南山城村在住。
京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)を卒業後、ウィーン美術アカデミーで学ぶ。
幼少期に好きだったという昆虫をモチーフに制作を行うが、ウィーン美術アカデミー在学中、草むらに潜む昆虫を観察しているうちに、草花と昆虫が共存する姿に魅せられ、それらの自然物の造形や色彩に強い関心を持つようになる。
帰国後、南山城村に拠点を置き、自然物の造形と色彩を生かした実在しない”いきもの”など数々の作品群を制作。国内外の芸術祭やギャラリーに出品。
豊かに広がる里山の自然を日々観察し、草花や昆虫などの自然物に通底する普遍性を探求しながら造り出された作品は、観る者に自然とのつながりを感じさせる力を持つ。

(記事執筆:西尾晶子(京都府地域アートマネージャー・山城地域担当))

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MESSAGE

クリエイターの声(地域の魅力)

私が南山城村を最初に訪れたのは、10才の頃でした。薄暗い森を抜け、一面に広がる青空と茶畑の美しい景色は、今でも鮮明に覚えています。この地に再び戻り、制作活動をしている事に、南山城への深い繋がりを感じています。豊かな自然が残る南山城村は、私にとってまだまだ知り尽くせない宝の山です。

推薦者から一言

西尾晶子
京都府地域アートマネージャー・山城地域担当

「今年は外来種が群生しているけれど、どの種が多いかは年によって違う。不思議と一人勝ちする種はないんです」と、旧田山小学校中庭の植物を眺めながら教えてくれた新野さん。自然を丹念に観察し続ける新野さんの作品は、自然物から採り出された形や色を通して、私たち人間も自然の一部として様々な生物と共存していることを思い出させてくれます。

WORKS 活動紹介

《Lilium longiflorum(2022.8.27,Kyoto.Japan)》
草花を採取して型取り、樹脂成形してパーツごとに複製し、それらを使って新たに生み出された“いきもの”。

この”いきもの”は、1つの花の様々な部位のかたちから造り出されています。昆虫のように見えるいきものの身体(形)と、草花の形の共通点を丹念に探りながら再構築されていきます。写真は着色前のもの。

樹脂で成形された膨大なパーツを使って作品を制作するのは、とても根気のいる作業なのだそうです。3週間から1か月かけて1つの作品が制作されます。

《生命の房( 2021.6.22,Kyoto.Japan)》
草花のパーツを型取りして組み合わせ、球体にした作品。離れてみると植物群に見えますが、近づくと目や足があることがわかります。

《日月の江(2015,Kyoto.Japan)》
南山城村の自然の中にうごめく得体の知れない生命の気配や、自然が作り出す夜の暗闇の圧力を引き出せないかと流木を型取って制作された、暗闇で光るシリーズ。

現在の創作のルーツとなった「昆虫日記」。日本とは気候が違うため昆虫があまりいない留学先のウィーンで、自分なりに昆虫を描いてみようと描きためていったそうです。当時暮らしていた家にあったサボテンを昆虫にしてみたり、拾った葉っぱに足をつけてみたりして、400以上の架空の生き物を創り出しました。写真はその一部。

アトリエ周辺の自然を観察する新野さん。

アトリエでは、創作の背景や制作技法を丁寧に教えてくだいました。

2003年3月に廃校となった旧田山小学校が村の生涯学習施設となり、その旧校舎の教室をアトリエとして使われています。