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[事業レポート]パシャパシャ丹後|写真ワークショップ(ちりめん街道-伊根の町並みコース)

丹後地域|与謝野町・伊根町

 

写真表現を通じて丹後地域を見つめた今年度のKaico―参加型アートプロジェクト「パシャパシャ丹後」では、どのように「まち」と「ヒトとヒト」の交流が起きたのか。ヒトとヒトとの交流を生むコワーキングスペース「クロスワークセンターMIYAZU」(宮津市)で、コンテンツディレクターを務める筒井章太さんに取材していただきました。

今回は、9月7日に与謝野町と伊根町で行った、写真ワークショップ「パシャパシャ丹後-はた織りと共にある暮らしを覗く」の様子をお届けします。

 

 

令和6年度京都府地域プログラム(丹後)
パシャパシャ丹後|写真ワークショップ

パシャパシャ丹後-はた織りと共にある暮らしを覗く

日時|9月7日(土) 10:00~17:00
講師|吉田亮人(写真家)
   小山元孝(福知山公立大学教授)
   堂前佳穂(KYOTOGRAPHIEキッズプログラムマネージャー)
   臼井勇人(臼井織物株式会社 織り手/たてつなぎ & Cijimu織物担当)
対象・定員|中学生以上一般20名程度

ちりめん街道-伊根の町並みコース概要

集合場所|旧加悦町役場庁舎
     与謝郡与謝野町加悦1060

10:00  織物レクチャー
10:50  カメラレクチャー
12:10-13:00  昼食休憩
13:00  パシャパシャタイム(旧尾藤家住宅、ちりめん街道周辺)
14:00  ↓バス移動
15:00  パシャパシャタイム(伊根町民俗資料館とその周辺)
16:00  ↓バス移動
16:45  ふりかえり
17:00  終了

 

 

まだまだ真夏の暑さが続く9月7日。太陽が燦々と町を照らす中、写真ワークショップ『パシャパシャ丹後-はた織りと共にある暮らしを覗く』ちりめん街道-伊根の町並みコースが開催された。

旧加悦町役場庁舎内での試し撮り

午前中は、重要伝統的建造物群保存地区「ちりめん街道」の入り口に建つ、旧加悦町役場庁舎を会場に織物文化のインプットとカメラの撮影実習が行われた。
福知山公立大学の小山元孝教授による丹後の歴史のレクチャー、臼井織物の臼井勇人氏による丹後ちりめん精練実験。そして、写真家の吉田亮人氏らによるカメラ実習を実施することで、参加者は丹後の織物文化と丹後ちりめん生地への理解を深め、写真の撮り方を学んだ。

精練前後の生地のやわらかさや、生地全体にできた凸凹のシボの変化を手触りで確認(撮影:安田哲馬)

 

昼食後は4チームに別れて、与謝野町加悦地区で写真撮影を行う“パシャパシャタイム”がスタート。日本遺産「丹後ちりめん回廊」構成文化財であるちりめん街道を代表する建物であり、今年(2024年)1月に国の重要文化財に指定されたばかりの旧尾藤家住宅や旧加悦鉄道加悦駅舎周辺を散策した。

「古くからある住宅を撮影で回っていると、窓の格子の本数が違うことに気がつき、4本は機屋、というように職業ごとに格子の本数が違ったということを教えてくれた」

「ちりめんを運ぶために地元の機織り業者で鉄道会社を創設したというエピソードを知った上で当時の駅舎を見学し、全く関係ないと思っていたことも実は密接に関わりあって町が形づくられたことに気づけた」

「実は尾藤家住宅に入ったことがなかったが、カメラを構えて隅々まで歩くことで、細かな部分のこだわりや豪華さに気づき、建物に込めた当時の人々の想いや情熱も感じることができた」

そういった、地元の参加者からの新たな発見が相次いだまち歩きとなった。

参加者作品

旧尾藤家住宅内での青木順一氏のガイドを聞きながらの“パシャパシャタイム”

ちりめん街道を散策しながらの“パシャパシャタイム”(撮影:安田哲馬)

 

その後は、バスで伊根町まで移動し伊根の舟屋の町並みや、昔の漁具や民具が展示された民俗資料館の伊根浦発信館おちゃやのかかでのパシャパシャタイム。

今回の参加者は京都市在住の外国人も数名参加しており、

「ずっと伊根の舟屋に来てみたかった。今回は、船にいくつもついた傷跡を撮影したり、地元の方のお話を聞いたり、ただの観光で見つけられない、そこに住む人々の暮らしを垣間見ることができたのがよかった」

そういった、参加者からの新たな発見が相次いだまち歩きとなった。

伊根浦発信館おちゃやのかか(民俗資料館)で地域の方の話を聞く参加者

舟屋から伊根湾へレンズを向ける参加者

 

その後レクチャー会場に戻り、吉田氏による撮影した写真の講評を行なった。今回も、参加者の個性や感性が写真に色濃く現れており、自分を表現し、他者を知り、交流するためのツールとしての写真の価値を感じることとなった。

ワークショップ後の感想発表及び講評では、参加者は「自分が世界を解釈し、その結果世界が変わっていくのを感じた」「実は世界ってこんなに色づいていたんだ」などの感想を発表し、吉田氏からも、「みなさん最高ですね」「みなさんの“みる”丹後を知ることができてよかったです」と講評が述べられた。

吉田氏からアドバイスをもらいながら撮影に励む参加者

最後に、2回のワークショップに参加した、参加者としての筆者の感想も述べてレポート記事を締めたい。

講師の吉田氏と「カメラで写真を撮るという行為を通じて、世界の面白がり方や、人生を愉しむのに大切なことを我々に教えてくれているのかもしれないですね」と言葉を交わした。

カメラという小さな箱をもつだけで、世界の捉え方や見え方が変わっていく。

この三角をこの角度から切り取ったらどうなるのだろう、カーブミラー越しに古民家を反転して写したら、タイムスリップしたような写真が撮れるかな。

レトロな電燈に太陽の光を被せてみたら、どんな光が生まれるのだろう。

筆者撮影

そんな風に、ワクワクしながらシャッターを切ったら、約2年半住んで見慣れてきた丹後の景色が、またイキイキと目に飛び込んできた。

人目も憚らずしゃがんで、寝そべって、草むらに飛び込んで、つまさきだちで背伸びをしてたくさん写真を撮り、五感を使って、丹後を感じた。

 

何もないと思っていた地域

当たり前の風景

毎日変わらない日常

筆者撮影

そうやって見逃していたもの、諦めていたものも、自分の視点や捉え方によって全く違う表情を見せてくれるかもしれない。

世界は変わらずそこにあるが、解釈次第で世界と自分は変えることができるのだ。

そんなことを感じたワークショップであった。

参加者作品

(記事作成日|2024年9月24日)

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記事執筆・写真

筒井章太(Tsutsuti Shota)

1995年生まれ。北海道滝川市出身。立命館大学文学部を卒業後、広告代理店に入社。中国支社を立ち上げ20社以上の日本企業の中国進出を支援する。2022年3月FoundingBaseへ入社し、現在は京都府宮津市の「クロスワークセンターMIYAZU」を中心とした関係人口創出事業に従事。昨年度の地域プログラム(丹後)の「参加型ワークショップ―Kaico」では、学ぶ編への登壇、及びトークイベントのファシリテーターを務める。

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令和6年度京都府地域プログラム(丹後)
写真ワークショップ『パシャパシャ丹後-はた織りと共にある暮らしを覗く』

写真ワークショップ「パシャパシャ丹後-はた織りと共にある暮らしを覗く」

コース別日時・対象|
 ①網野の機屋の町並み-天橋立コース(小学生親子)
  日時|8月17日(土) 10:00~17:00
  対象|小学生親子(*)10組20名程度

 ②網野の機屋の町並み-天橋立コース(一般)
  日時|8月18日(日) 10:00~17:00
  対象|中学生以上一般20名程度

 ③ちりめん街道-伊根の町並みコース(一般)
  日時|9月7日(土) 10:00~17:00 ※雨天の場合は9月8日(日)
  対象|中学生以上一般20名程度

参加|無料(要申込/先着順)

講師|吉田亮人(写真家)
   小山元孝(福知山公立大学教授)
   堂前佳穂(KYOTOGRAPHIEキッズプログラムマネージャー)
   臼井勇人(臼井織物株式会社 織り手/たてつなぎ & Cijimu織物担当)
   森山道子(手作り紙芝居)※8/17のみ

主催|京都:Re-Search実行委員会(京都府、宮津市、京丹後市、伊根町、与謝野町、海の京都DMO ほか)
機材協力|キヤノンマーケティングジャパン株式会社
協力|MUZ ART PRODUCE 
助成|令和6年度文化庁文化芸術創造拠点形成事業

 

プログラムの詳細、講師プロフィールは▼こちら
https://kyotohoop.jp/program/tango2024/

 

 

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令和6年度京都府地域プログラム(丹後)
Kaico-参加型アートプロジェクト『パシャパシャ丹後-はた織りと共にある暮らし』事業レポート一覧

写真ワークショップ(網野の機屋の町並み-天橋立コース編)

●写真ワークショップ(ちりめん街道-伊根の町並みコース編)

出張写真ワークショップ(与謝の海支援学校編)

トークイベント

展示・プログラム講評

展示|吉田亮人『Weave Story』

関係者の声

 

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(記事執筆:筒井章太(クロスワークセンターMIYAZU・コンテンツディレクター))