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[アーカイブ] Kaico(カイコ)- 地域をさらにたのしくクリエイティブにするアイデアづくり|研修

丹後地域|京丹後市・与謝野町

本記事は、2021年2月19日(金)・20日(土)に行われた、『Kaico(カイコ)- 地域をさらにたのしくクリエイティブにするアイデアづくり』をレポートした、WEBサイト【京都府地域文化創造促進事業】のアーカイブ記事です。

※2023年度の『Kaico – 参加型アートプロジェクト』はこちら

研修『Kaico(カイコ)- 地域をさらにたのしくクリエイティブにするアイデアづくり』

丹後地域では文化・芸術を核としたまちづくりや地域の資源・資産からクリエイティブにアイデアをうみだすことをテーマにした講座とワークショップを実施しました。講師はアートとデザインの観点からまちづくりに関わる紫牟田伸子さん、装いの行為とコミュニケーションの関係性に着目したアートプロジェクトを手掛ける西尾美也さんをお迎えしました。

日時|2021年2月19日(金)・20日(土)
場所|与謝野町産業創出交流センター1階ホール
   網野町浅茂川区民会館2階ホール
主催|京都府
協力|京都:Re-Search実行委員会
助成|一般社団法人 地域創造「地域の文化・芸術活動助成事業」

◾️ 講座1『クリエイティブな地域をデザインする〜かかわり・つくり・まきこむ』
日時|2021年2月19日(金)13:30〜14:30
場所|与謝野町産業創出交流センター1階ホール
講師|紫牟田伸子(編集家、プロジェクトエディター、デザインディレクター)

◾️ 講座2『街の中で行動する・交渉する・形にする方程式』
日時|2021年2月19日(金)14:45〜15:45
場所|与謝野町産業創出交流センター1階ホール
講師|西尾美也(美術家)

◾️ ミニワークショップ『「ことば」を組み替えて想像力を広げる』
日時|2021年2月19日(金)15:50〜16:30
場所|与謝野町産業創出交流センター1階ホール
講師|西尾美也

◾️フィールドワーク
日時|2021年2月20日(土)10:00〜12:00
場所| 網野町浅茂川周辺

◾️ ワークショップ『地域資産からクリエイティビティをうむ』
日時|2021年2月20日(土)13:00〜15:00
場所|網野町浅茂川区民会館2階ホール
講師|西尾美也

◾️ トークセッション『クリエイティビティを形にするには?』
日時|2021年2月20日(土)15:00〜17:00
場所| 網野町浅茂川区民会館2階ホール
登壇者|紫牟田伸子、西尾美也、参加者

本プログラムは京都府における新型コロナウィルス感染拡大による緊急事態宣言の発令に伴い、神奈川県在住の講師紫牟田伸子氏はオンライン登壇とし、1日目の講座はオンラインとオフラインのハイブリッド形式で実施しました。

 

 

1日目

講座1『クリエイティブな地域をデザインする〜かかわり・つくり・まきこむ』

まず始めに、紫牟田伸子さんから「シビックプライド」とは何であるかを多様な視点から説明いただきました。次に、地域をクリエイティブにする方法を国内・海外の具体的事例と共に紹介いただきました。また、まちづくりにおけるアートの役割についてもお話しいただきました。

「街は誰のものだろう?」の問いかけから始まり、「まちは自分たちのもの、みんなのもの」という考えのもと、シビックプライドとは何かについて話されました。
「シビックプライド」は日本語にすると「市民の誇り」または「郷土愛」と訳されるかもしれません。しかしながらこの言葉だけでは表現しきれない感情・感覚がシビックプライドには含まれています。

元々、産業革命後の英国におけるシビックプライドとは、集団行動や個人の自発性の原動力であり、押し付けるものではなく、育まれなければならないものと言われています。「この街は私の街」と言う自負の感情が街を構築させ、シビックプライドを醸成していきます。「シビックプライド」はひとりひとりの心の中に育まれるもので、当事者自身に基づく自負心であり、個人の心の中につくられるものです。そしてそのような心に育まれた人と街との関係性で街が成り立っていきます。街への愛情を視覚化することがアートの役割であり、視覚化される街への愛着がシビックプライドを生むことになります。つまり、地域をクリエイティブにするのはあなた自身であること。あなた自身が街そのものであると言えるのです。

実際に地域をクリエイティブにする方法としては、①勝手にやる ②他人を主体的にすることに関わる ③関われる場をつくる ④イマジネーションを重ねること、が挙げられます。
そして、まちづくりは課題解決からのアプローチではなく、ワクワク楽しいことを増やしていくアプローチが良いと話されました。

紫牟田伸子(しむたのぶこ)| 編集家/プロジェクトエディター/デザインディレクター 個人事務所SJ主宰、株式会社Future Research Institute代表取締役社長。 美術出版社、日本デザインセンターを経て、2011年個人事務所SJ開設。2018年株式会社Future Research Institute設立。「ものごとの編集」を軸に、商品企画、コミュニケーション戦略、ブランディング、プロデュースなどに携わる。また、デザインとアートのウォッチャー/ライターとして、講演や雑誌などへの寄稿を行う。 主な著書に、『シビックプライド』『シビックプライド2』(共同監修/宣伝会議/2008, 2015)、『日本のシビックエコノミー』(編著/フィルムアート社/2016)など。

 

講座2『街の中で行動する・交渉する・形にする方程式』

子ども時代のファッションへの関心から始まった装いにおけるコミュニケーションの探求が、ご自身の表現方法としてライフワークになっているとご紹介いただき、様々なアートプロジェクトの事例からクリエイティビティをうむヒントを示していただきました。

ファッション・デザインがモノとしての服のデザインであれば、西尾さんの表現活動はファンションスケープ・デザイン(コトとしての服のデザイン)と定義されています。装いが閉ざしているコミュニケーションを装いによって取り戻すことを目的として研究される中で、多様な価値観を創出する機会を与えるワークショップや、モノからコトへ市場化するアートプロジェクトのプロセスを大切にされています。

世界のさまざまな都市で見ず知らずの通行人と衣服を交換する『Self Select』(2007~)、服を手洗いして街中に干すプロセスを通して感覚を洗濯する『感覚の洗濯』(2018~)など数多くのアートプロジェクトの作品事例を紹介してくださいました。

また、大阪市西成区という特徴あるエリアで、地域のおばちゃんとのプロジェクトから始まったファッションブランド「NISHINARI YOSHIO」の立ち上げまでの経緯、商品開発から、百貨店でのPOP UPショップ販売に至るまで、どのように地域の方と関係性を構築し、場を開かれたのかも紹介いただきました。

文化庁新進芸術家海外研修で赴かれたケニアのナイロビでは、アートレスな場所でアートプロジェクトを仕掛けることを実践。身体を展示台に見立て、ストリートを行進する。『Gyo-Show』(2012) のアートプロジェクトのなどから、どこでも誰とでも実践可能なアートプロジェクトの可能性を示唆してくださいました。そしてご自身の表現を「すでにあるものとともに自由になろう」という言葉にされています。

西尾さんがさまざまなアートプロジェクトを実践、実験されてきた中でアートプロジェクトとは、①作品そのものではなく制作のプロセスを重視する ②展示室の中ではなく社会的文脈で表現を行う③アートを媒介に地域を活性化させようとするものである、と話されました。加えて、奈良県立大学地域創造学部での美術教育、アートマネージメントの人材育成プログラム「CHISOU」の紹介をされました。

そして、アートは特別ではなく誰にでも開かれた表現。自分か楽しく生きることで、まちがおもしろくなると話されました。

西尾美也(にしお よしなり)| 美術家 1982年奈良県生まれ。同県在住。東京藝術大学大学院博士後期課程修了。博士(美術)。文化庁芸術家在外研修員(ケニア共和国ナイロビ)などを経て、現在、奈良県立大学地域創造学部准教授。装いの行為とコミュニケーションの関係性に着目し、市民や学生との協働によるプロジェクトを国内外で展開。アフリカと日本をつなぐアートプロジェクトの企画・運営のほか、ファッションブランド「NISHINARI YOSHIO」も手がける。近年の主なグループ展に、「東京ビエンナーレ2020/2021」、「DOMANI・明日展」(国立新美術館、2018年)、「あいちトリエンナーレ2016」、などがある。奈良市アートプロジェクト「古都祝奈良」プログラムディレクター。奈良県立大学実践型アートマネジメント人材育成プログラム「CHISOU」ディレクター。一般社団法人CHISOU代表理事。

 

ミニワークショップ 『「ことば」を組み替えて想像力を広げる』

用意された100個の文から、一文ずつインスピレーションを受けて瞬間反応で言葉を組み替えて次の文を作っていくレッスンを行いました。言葉という誰もが持ち得ている手段を使ってイマジネーションを広げていきました。

 

 

 

日目

フィールドワーク

地域にあるモノ(資産)を見つけに会場周辺を散策しました。

 

ワークショップ『地域資産からクリエイティビティをうむ』

改めて講師の西尾さんよりアートプロジェクトの考え方についてお話しいただき、4チームに分かれ、チーム毎に丹後でのアートプロジェクトのアイデア出しをおこないプロポーザルを作成しました。

まずは「地域にあるもの」「地域にないもの」「地域の魅力」「地域の課題」の4つのカテゴリで思いつくものを書き出し、それらを整理し異質なものを組み合わせるなど、1日目のプログラムで学んだアートプロジェクトの手法に沿って取り組みました。

 

トークセッション『クリエイティビティを形にするには?』

チーム毎にプロポーザルを発表し、講師のお二人に講評いただいた後、参加者同士で他チームのプロポーザルにも意見を述べました。『TAN GO KAN (五感で楽しむ丹後)』や『シン・ウラシマ』の企画には、タイトルから内容を想像させるプロジェクト名で、西尾さんの講座内容を活用されていることが見受けられました。

『玉手箱をあけてみよう!』の発表では、メモの一つにあった「地域の人が魅力に気づいてないんじゃないの?」から、紫牟田さんが、これはどこの地域も一緒で、エンターテイメント(映画館、博物館)、高層マンションなどがないという消費的な観点ではなく考えることが大切であると話されました。丹後の良さの本質(自然の豊かさ、食の豊かさ、歴史の中で育まれてきたこと)が宝箱を開けた瞬間に驚きとなるようなアイデアを考えてみる、そして浦島太朗伝説を今の時代に読み替えることが大事と述られました。

また、参加者の皆さんの普段の仕事や活動におけるアイデアづくりへの活用方法についての質問・相談にも講師のお二人に答えていただきました。

「実際にどのように企画を作り込んでいけば良いのか?」の質問に対して、1人で悩むより、ワークショップを開催したり人に聞いたり、アイデア出しの1000本ノックをしたりと、この二日間の学びを活かしてレベルをあげていくことをしていただきたいと話されました。最初の一歩は勇気がいるが、実際にやってみると意外と大変ではなかったりする。そして途中の困難は予測不可能であるが、リスクを考えると何もできなくなってしまうので、ポジティブマインドで「どうやったら出来るか?」をやりながら考えてほしいとも話されました。

まちづくりは学びあいであり、アートが学びの触媒になり、街のことを知っていくことになる。今日のアイデアを実践してそれを実感してほしいと締め括られました。

参加者からは、「いつも使ってない脳味噌を使った。2日目の講座を受け、今日のワークショップでアイデアが出てきていることに気付き嬉しかった。」との声もあり、クリエイティブにアイデアをつくることを体感できた2日間となったようです。