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[アーカイブ] COCHAE・武田美貴さん|クリエイターズファイル

丹後地域|京丹後市

本記事は、2020年度にWEBサイト【京都府地域文化創造促進事業】内「クリエイターズファイル」に掲載したアーカイブ記事です。

初期の折り紙シリーズから最新の海遊館グッズと一緒に、バラエティに富んだ商品を生み出してきた美貴さん Photo by Shintaro Tanaka

“あそびのデザイン”をテーマに活動するデザイン・ユニットCOCHAEで、主に折り紙デザインを担当する武田美貴さん。彼女は風光明媚な風景が広がる丹後半島のおヘソにあたる京丹後市峰山町を拠点に活動しています。生まれ育ちは岡山県岡山市で、子供の頃は合唱団で歌ったり、ゴミ袋で洋服を作ったり、絵を描くよりもモノをつくる遊びをよくしていたそうです。美大進学で上京し、映像専攻で勉学に励む傍らで、ポシェットや型紙なしに自在に洋服などをつくってはギャラリーなどで販売していたそうです。そんな時、友人が超絶技巧並の折り紙細工で恐竜を作っていたのを見て、「もっと簡単に折れて、絵がついていたり写真が入っていたら、若い子たちが折り紙をもっと楽しめるのにな〜」と、折り紙デザインを始めたことがCOCHAE結成のきっかけとなりました。

美貴さんに折り紙の魅力を聞くと、「一枚のペラペラの紙からどんな形にもできること!」「鶴の折り方も誰が教えるでもなく伝承されてきたもので、教科書もいらず、老若男女問わず楽しめて、想像力が無限大に広がるおもちゃ。それが脈々と伝承されてきたということは素晴らしいこと。」そして「日本で生まれた文化だから伝承したい!」と想いを語ります。

2003年のCOCHAE結成から、大学卒業後もコツコツと折り紙デザインの商品を発表し続け、2005年にテレビ番組で折り紙付き書籍「折りCA」を取り上げられ一気に問合せが増えるようになりました。そして、2008年に、一枚の紙から無限の顔を折れる「FUNNY FACE CARD」でグッドデザイン賞を受賞しました。この商品を思いついた時には、「すごいモノを思いついたぞ!」と今までになくワクワクしたそうです。

「FANNY FACE CARD」いろんな表情になるのが不思議です。

その後も東京を拠点に活動していましたが、2014年に結婚を機にご主人の故郷の京丹後市へ移住し新生活が始まりました。こちらでの暮らしは、「何と言っても食べものが美味しいのが幸せ!山もあって海もあって自然豊かで、仕事に集中できる。そして人の距離が近いのも安心できる。」と。実際、義理のご両親との二世帯同居、義理の弟、妹さん家族も目と鼻の先に住んでいて仲良し大家族の環境で暮らしています。
気分転換に裏山へ散歩に出かけることで新しいアイデアが浮かぶこともよくあるそうですが、最もエネルギーチャージできる場所は、元芸妓さんがママのスナック「小鈴」。今は妊娠中でお酒はNGですが、気取らない、心地よいサイズ感が好きなのだそう。

お気に入りのスナック「小鈴」のカウンターにて Photo by Shintaro Tanaka

東京国立新美術館での展示会や、ニューヨーク近代美術館のミュージアムショップでもグッズ販売されたこともあるCOCHAEですが、美貴さんが京丹後に住むことで、地域のデザインの仕事も多く手掛けています。丹後の郷土料理であるばら寿司パッケージや、観光てぬぐいから最近は料理店のインテリアディレクションも手掛けています。こうした地域での仕事を通じて、地域のことを深く知れることも仕事が楽しくて仕方ない理由だそうです。

地域でのデザイン商品たち。どれも地域のことをよく観察してあります。 Photo by Shintaro Tanaka

丹後ちりめんのブランケットパッケージデザイン

COCHAE商品には絵付き折り紙シリーズがありますが、この商品を作り始めた時、美貴さんのご実家にあった「紙工芸技法大事典」の中に大正時代の絵付き折り紙を偶然見つけ、復刻シリーズが生まれました。これは、折り紙デザインをするときは、数学的思考で作り上げていきますが、小さな子供でも絵に沿って折れば出来上がるように考えられています。マニアックになりすぎると面白みに欠けてしまう一歩手前で、楽しい、可愛いをキープしているところがCOCHAEのなせる技です。

絵付き折り紙復刻シリーズのきっかけとなった本

そして美貴さんの次なる構想は、折り紙の手法で巨大なものを作りたいそうです。例えば、遊具だったり、折ったり畳んだりで成り立つ洋服だったり。一枚の紙から広がる創造が、スケールを大きく変えて世にお目見えする時もそう遠くはないかも知れません。


COCHAE 武田美貴
1980年岡山県岡山市に産まれる。 大学から東京移り、2003年よりデザインユニットCOCHAE結成。 2014年から京都府京丹後市に移住する。

COCHAE
軸原ヨウスケ、武田美貴によるデザイン・ユニット。 2003年結成、「折紙をもっとポップに!」をキーワー ドにグラフィック折紙を制作。現在は新しい視点を持った玩具や雑貨の開発、商品企画、展示やWSなど 幅広い活動を行っている。 近年は山方永寿堂「岡山名物 きびだんご」などパッケージデザインを数多く手がける。 著書に 『折りCA』(青幻舎、2003~)シリーズ、『妖怪おりがみ』 (講談社、2008)、『カワイイヲリガミ細工』(誠文堂新光社、2016)など多数。 折り紙パズル「ファニーフェイス カード」がグッドデザイン賞受賞(2008)。『トントン紙ずもう』(KOKUYO、2012)グッドトイ2013選定。「YAMA COFFEE」(ONSAYA、2015)、「紅だるま」(佐藤紅商店、2017)がアジアの優れたパッケージデザインに贈られるTOP AWARDS ASIAを受賞。

WEBサイト|https://cochae.com/


取材日|2020年6月24日
取材・文章|甲斐少夜子(京都府地域アートマネージャー・丹後担当)
写真提供|COCHAE