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[事業レポート]パシャパシャ丹後|展示|吉田亮人『Weave Story』

丹後地域|京丹後市・与謝野町・伊根町

 

写真ワークショップ『パシャパシャ丹後-はた織りと共にある暮らしを覗く』でカメラレクチャー講師を務めた写真家・吉田亮人氏が、丹後地域の「織り」に関わって50年以上になる織物職人 3 組を取材し、彼らが紡いできた人生の物語をカメラを介してのぞき、彼らの紡ぐ言葉と共に表現した作品が制作しました。

これらの作品は、展覧会『パシャパシャ丹後-はた織りと共にある暮らしを観る』にて、メイン会場である旧尾藤家住宅で、写真ワークショップ参加者の作品とともに展示を行いました。

今回は、作品制作の背景を伝える吉田さんが展覧会に寄せたステイトメントとともに、展示の様子、写真作品の一部をご紹介します。

 

 

令和6年度京都府地域プログラム(丹後)
展覧会『パシャパシャ丹後‐はた織りと共にある暮らしを観る』
展示|吉田亮人『Weave Story』

会期|2024年11月1日(金)~12月3日(火)
会場|旧尾藤家住宅(与謝野町字加悦1085)

作家|吉田亮人(写真家) 

協力|池田万里子/袖長俊男/小森勝吉/小森明美/
   向井久仁子/伊根町商工会/吉村機業株式会社/小西鉄也 

 

 

『Weave Story』

 

 「丹後の織物をテーマに何か作品を撮ってみませんか」

 

いつだったか、京都府文化芸術課の方からそんな提案をいただいた。
深い考えもなく「いいですよ」と返事をしてしまったのだが、考えてみれば「織物」についての知見もなければ、特段に興味関心が高いわけでもない。
しかし「織物作りに携わる人間」には会ってみたいと思った。しかも出来るだけこの仕事に長く携わり、経験の分厚い方に会って話を聞いてみたい。そして織物の仕事を通した人生の物語を写真で紡いでみたいと思った。
そんな要望を担当者に出して、紹介してもらったのが、伊根町・本庄の池田万里子さん、京丹後市・峰山町の袖長俊男さん、そして京丹後市・久美浜町の小森勝吉さん・明美さんご夫妻の3組だった。
写真を撮る前に、それぞれがこれまでどんな人生を送ってこられたのか、お話をじっくり聞かせてもらおうと、彼らの職場や自宅を訪ねた。

 

「なあんにも面白い話なんかないで」

 

皆、最初はそうやって謙遜されたが、いざ話が始まるとそのどれもが面白く、他のどこにもない特別な物語だった。
3組とも「織」に関わって50年以上。
僕の生きた年数よりも長く織機の前に立ち、手を動かし、いまだ現役で織り続けていること自体にまず驚く。しかしそれよりも僕の胸を打ったのは、彼らの個人史が「織」を中心にこの丹後という地域でずっと紡がれてきたということだ。
丹後織物の勃興と衰退の過程を目の当たりにしながら、自分の仕事を守り、家族のことを考え、生活していくのは本当に苦労の連続だったのだろう。

 

「みんなこれじゃ生活できんて、辞めていきんなさったわ。今じゃ機屋はこの部落でうち一軒だけになったなあ」

 

話の所々で困難な時期のことが語られるわけだが、それでも人生の山と谷を行ったり来たりしながら、来る日も来る日も黙々と同じ場所に立ち続け、小さな日々を紡いできた彼ら。

 

その人生を織物でたとえたら一体どんな模様で、どんな手触りになるのだろう。それが知りたくて、彼らの人生のほんの一瞬をカメラを介してのぞいてみた。

 

吉田亮人

 

 

 

作家プロフィール

吉田亮人|よしだ あきひと|写真家

1980年宮崎県生まれ。京都市在住。滋賀大学教育学部卒業後、タイで日本語教師 として1年間勤務。帰国後小学校教員として6年間勤務。2010年より写真家 として活動開始。 広告や雑誌などを中心に活動しながら、個人的な出来事や問題、記憶から出発した 作品を多数制作。その作品は国内外で展覧会が開催されるとともに、多くの出版物 が刊行されている。 2023年に写真集出版社「Three Books」を設立し共同代表を務める。 主な出版物に「Brick Yard」(私家版)「Tannery」(私家版)、「THE ABSENCE OF TWO」(青幻舎・Editions Xavier Barral)「The Dialogue of Two」(Three Books/RPS)「The Screw」(Three Books)、写真家としての10年間を綴った書 籍「しゃにむに写真家」(亜紀書房)などがある。 第47回木村伊兵衛賞2023最終候補、Images Vevey Book Award 2023ノミネート、 Paris Photo Aperture First Book Award 2015ノミネート、コニカミノルタ・ FOTOPREMIO2014年度グランプリ、日経ナショナルジオグラフィック写真賞 2015・ピープル部門最優秀賞など受賞やノミネート多数。

WEB|http://www.akihito-yoshida.com(外部リンク)

 

 

令和6年度京都府地域プログラム(丹後)
展覧会『パシャパシャ丹後-はた織りと共にある暮らしを観る』

 

会期|2024年11月1日(金)~12月3日(火)
観覧|無料・申込不要

会場|旧尾藤家住宅ほか7ヶ所

出品者数・作品数|95名・123点

出品者|写真ワークショップ『パシャパシャ丹後』参加者、京都府立与謝の海支援学校生徒
    吉田亮人(写真家)※旧尾藤家住宅展示会場のみ

撮影場所|網野の機屋の町並み、京都府立丹後郷土資料館、旧永島家住宅、ちりめん街道の町並み、伊根浦発信館おちゃやのかか(民俗資料館)、伊根の町並み、浅茂川区民会館、旧加悦町役場庁舎、京都府立与謝の海支援学校

 

プログラム全体の詳細は
▼こちら
https://kyotohoop.jp/program/tango2024/

 

 

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