READING KYOTOHOOPを深める

【事業レポート】京都山河抄~京都丹波の光景~|公開制作

南丹地域|南丹市

 

現代美術家・ヤマガミユキヒロさんとともに、南丹地域の魅力を再発見する取組として実施してきた『京都山河抄~京都丹波の光景~』。丹波猿楽などにゆかりが深い南丹地域の、伝統芸能を育んだ地域性に着目し、2024年の5月からヤマガミさんがリサーチや公開制作、地域交流、そして制作発表に取り組みました。

前回の「ワークショップ」のレポートに引き続き、8月に行われた公開制作の様子を、美術批評家の平田剛志さんに取材いただきました。

 

 

令和6年度京都府地域プログラム(南丹)
京都山河抄~京都丹波の光景~
公開制作 概要

日程|令和6年8月17日(土)、8月18日(日)
会場|美山かやぶき美術館
公開時間|11:00~16:00
見学|無料・申込不要

 

令和6年度京都府地域プログラム(南丹)『京都山河抄~京都丹波の光景~』の一環として、2024年8月17日(土)と18日(日)に美山かやぶき美術館においてヤマガミユキヒロの「公開制作」が開催された。この公開制作では、10月に予定されている展覧会に向けて出品作品の制作過程が公開され、アーティストの制作を間近に見られる貴重な機会となった。本稿では8月17日に行われた公開制作の様子を報告したい。

ヤマガミの作品は、鉛筆や墨などで描画した絵画に、同一視点から撮影した映像をプロジェクターによって投影する「キャンバス・プロジェクション」という手法で制作・発表される。ヤマガミは5月から美山を定期的に訪れ、スケッチを重ねてきた。

 

  

 

公開制作初日の8月17日10時頃、ヤマガミは美山かやぶき美術館に到着し、画材や映像機器などのセッティングを行った。絵画制作のための鉛筆や筆、墨汁などの画材、工具に加え、パソコンやモニター、プロジェクターなどの映像機器もセッティングするのがヤマガミの特徴だ。

会場には、7月27, 28日に開催されたぬり絵ワークショップで制作されたぬり絵のスライドショーの上映や、先日のワークショップ同様に自由に制作できるぬり絵のコーナーも設けられた。

 

 

11時、つなぎ服に着替えたヤマガミの公開制作がはじまった。縁側のある居間に立てかけられたパネルにはまだ余白が目立つが、左側に茅葺き民家、中央に川と右側に山並みが鉛筆でラフに描かれている。この風景は、リサーチの中から選ばれた下吉田の由良川が流れる集落の風景である。

パネルの左には取材地の写真を表示したノートパソコンが置かれ、ヤマガミは写真を確認しながら描き進めていく。時おりサンドペーパーの上で鉛筆を削り、木々の植栽、山並みなど鉛筆を短く動かして自然の立体感を作っていく。完成作品はキャンバスに映像が重ねられるが、制作途中ではモニターとパネル2つの画面が並び、まるで映像を絵画に変換していくようだ。

 

 

公開制作中は遠方ながらも23名の来場者があった。午前中に滋賀から来られたご家族は、テレビ番組「よ~いドン!」(関西テレビ放送)でヤマガミの作品を見たと記憶しており、興味深く制作風景を見つめていた。南丹市日吉在住のご夫婦は、ぬり絵にも参加し、完成後には美山や綾部のおすすめの風景スポットを教えて頂いた。

 

 

午後には、かやぶき美術館の向かいに建つ郷土資料館をスケッチしていた画家の女性たちが来場し、スケッチについて相談が行われる場面もあった。

8月18日の公開制作でも、ワークショップ参加者がヤマガミさんにスケッチを相談する場面がみられました。

 

 

昼過ぎには、モチーフとなった下吉田に定点撮影のカメラ設置を行ったが、雨が降り始めたためカメラを撤去せざるを得なかった。屋外での映像撮影は天候に左右されると思い知らされた。

 

短い公開制作だったが、来場者は築150年の茅葺き民家とヤマガミの絵画制作を熱心に見ていた。古民家と現代アートの組み合わせは多くの人を引き付ける魅力があると感じられた。また、期間中、来場者がヤマガミに美山や観光で訪れたおすすめの風景を教え合う場面が多くあった。これは風景画が鑑賞者の記憶を呼び起こす反応を示している。ヤマガミの作品は鑑賞者それぞれの風景記憶を呼び覚ます風景画なのだ。今回の公開制作で描かれた作品が展覧会でどのようになっているのか。風景の完成を待ちたい。

 

(記事作成日|2024年9月5日)

トップに戻る

 

 

記事執筆・写真

平田剛志(HIRATA Takeshi)

美術批評。1979年生まれ。関西の現代美術をフィールドに、新聞・雑誌やフライヤー、ウェブメディア等に寄稿。主な論考は、「山本雄教展 sign」(+1art、2024)、「記憶をひらく」『すべ と しるべ 2020図録』(ギャラリー・パルク、2021)、「パランプセストの風景」『ヤマガミユキヒロ展 ロケーション・ハンティング』(A-Lab、2016)など。

トップに戻る

 

 

 

令和6年度京都府地域プログラム(南丹)
展覧会『京都山河抄~京都丹波の光景~』

詳細やヤマガミさんのプロフィールは▼こちら
https://kyotohoop.jp/program/nantan2024/

トップに戻る

 

 

令和6年度京都府地域プログラム(南丹)『京都山河抄~京都丹波の光景~』事業レポート一覧

ワークショップ

・公開制作

リサーチ

トップに戻る

(記事執筆:平田剛志(美術批評家))