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【事業レポート】京都山河抄~京都丹波の光景~|ワークショップ「百色百景・みんなの風景 in 美山」

南丹地域|南丹市

 

南丹地域で美術家・ヤマガミユキヒロさんとともに展開している「京都山河抄~京都丹波の光景~」。10月12日からはいよいよ、美山かやぶき美術館での展覧会が始まります。

「京都山河抄~京都丹波の光景~」では、これまで何がおきてきたのか。また、アートを通じてどんな人々との交流があったのか。本事業を美術批評家の平田剛志さんに取材していただいています。

まず今回は、7月27日に実施したワークショップ「百色百景・みんなの風景 in 美山」の様子をお届けします。

 

令和6年度京都府地域プログラム(南丹)
京都山河抄~京都丹波の光景~
ワークショップ「百色百景・みんなの風景 in 美山」概要

日程|令和6年7月27日(土)、7月28日(日)
各日|10:30~12:00
講師|ヤマガミユキヒロ(現代美術家)、
会場|美山かやぶき美術館
対象|どなたでも(小学3年生以下は保護者同伴)
定員|各日15名〈参加無料〉
持ち物|鉛筆、色鉛筆、クレヨン、水彩絵の具など

▼タイムテーブル
10:30 集合・あいさつ
10:40 アーティストトーク
11:00 ぬりえ制作
11:45 完成・みんなの風景をみてみよう
12:00 終了

 

令和6年度京都府地域プログラム(南丹)「京都山河抄~京都丹波の光景~」の一環として、2024年7月27日(土)と28日(日)に美山かやぶき美術館においてヤマガミユキヒロによるぬりえワークショップ「百色百景・みんなの風景 in 美山」が開催された。

ヤマガミユキヒロの作品は、「キャンバス・プロジェクション」という独自の技法で制作される。この手法は、日常の風景を鉛筆や墨などで描画した絵画に、同一視点から撮影した映像をプロジェクターで投影することで、絵画に光と時間を取り入れ、移ろいを表現するものである。

 

今回のワークショップでは、会場となった美山かやぶき美術館に隣接する郷土資料館など美山の風景を描いたヤマガミの鉛筆画をもとに、参加者がぬり絵を行う。ぬり絵の完成後、ヤマガミの作品に投映して重ね合わせ、鑑賞するという内容である(※)。ヤマガミによる「キャンバス・プロジェクション」の手法を用いたぬり絵のワークショップであり、コラボレーションでもあるのが特徴だ。

※ワークショップでは、用意されたぬり絵の下図5種のうち1種を投影。

 

7月27日のワークショップには地域住民を中心に大人から子どもまで15名が参加した。講師であるヤマガミに加えて、アシスタントとしてアーティストの佐藤健博が指導にあたった。夏の強い日差しのなか、参加者たちは朝10時頃から集まり、自分の画材を用意するなど、意気込みが感じられた。ヤマガミによる概要説明では「絵に失敗はない」と、楽しんで描くことを伝え、ぬり絵が始まった。

会場には、色鉛筆やパステル、水彩、鉛筆、墨汁などの画材が用意され、参加者は好きな色を選んで塗り重ねていった。参加者の中には、久しぶりに絵を描くという方が多く、慎重に色を選んだり、塗ったり、集中して取り組んでいた。

ヤマガミは、パステルを手にした子どもたちにパステルを指で伸ばしてみることをアドバイスしたり、空を描いた絵には飛行機雲を描き加えてみることを提案するなど、参加者それぞれの様子から、さりなげなく技法や構図のアドバイスをしていたのが印象的だった。

 

 

11持45分頃、完成したぬり絵をスキャナーで取り込み、ヤマガミの鉛筆画の上に参加者のぬり絵が投映された。作品が映し出されると歓声が上がり、美山の「みんなの風景」の移り変わりを楽しんだ。参加者からは同じぬり絵でも紙とプロジェクションでは「違う感じがする」といった反応もあり、新たな「風景画」に驚いた様子が伺えた。

 

ワークショップ終了後も多くの参加者が会場に残り、追加のぬり絵を制作する姿が見られた。日頃は絵を描かない参加者からは「絵なんて描いたことがなかったけれど楽しい」といった感想もあがり、ぬり絵を通じて日頃は見慣れている地域を再発見する機会となった。

 

ヤマガミは、5月から美山でのリサーチを行い、数多くのスケッチを描いてきた。こうしたリサーチや風景を撮影、スケッチしている中で出会った地域の人々もワークショップに参加、来場されるなど、地域とそこに住む人々との関わりが、ワークショップの和やかな場にも表れていた。ぬり絵は10月の展覧会で完成作品として展示が予定されており、どのような「百色百景」が現れるのかが楽しみだ。

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記事執筆・写真

平田剛志(HIRATA Takeshi)

美術批評。1979年生まれ。関西の現代美術をフィールドに、新聞・雑誌やフライヤー、ウェブメディア等に寄稿。主な論考は、「山本雄教展 sign」(+1art、2024)、「記憶をひらく」『すべ と しるべ 2020図録』(ギャラリー・パルク、2021)、「パランプセストの風景」『ヤマガミユキヒロ展 ロケーション・ハンティング』(A-Lab、2016)など。

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令和6年度京都府地域プログラム(南丹)
展覧会『京都山河抄~京都丹波の光景~』

詳細やヤマガミさんのプロフィールは▼こちら
https://kyotohoop.jp/program/nantan2024/

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(記事執筆:平田剛志(美術批評家))