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[文化力レポート]第29回京都国際子ども映画祭

 

京都府では、京都府内における、文化芸術による地域活性化を進めるため、地域に根ざした個性豊かな文化資源を活用して創造・発信する新たな文化芸術活動であって、府民の文化芸術の鑑賞・体験機会を増やす取組を支援する「文化力チャレンジ補助事業」を実施しています。

「文化力レポート」では、京都府地域アートマネージャーなど、文化芸術の専門人材による、事業レポートをお届けしていきます。

今回は、8月に開催された「特定非営利活動法人 キンダーフィルムフェスト・きょうと」による【第29回京都国際子ども映画祭】の様子をお届けします。

 

目次 
京都国際子ども映画祭ってなに!?
子どもスタッフが深堀りする映画
映画に学び、親しむ
子ども×映画×京都~これからの活動に寄せて~

記:髙見澤こずえ(京都府文化芸術課・専門人材)
編集:大賀由佳子(京都府文化芸術課・専門人材)

 

京都国際子ども映画祭ってなに!?

令和5年文化力チャレンジ補助金採択事業のひとつ「第29回京都国際子ども映画祭」(8月4~6日、主催:NPO法人キンダーフィルムフェスト・きょうと)の最終日の会場を訪問しました。会場は映像文化の振興と保存に努める京都文化博物館フィルムシアターでした。

本事業は、『京都国際子ども映画祭』の名の通り、「『子どもによる子ども』の映画祭」として、ベルリン国際映画祭などで上映された世界中の映画の中から子どもが主人公の映画を選出して上映する祭典です。運営や司会進行、グランプリ選考を小学4年生から高校生の“子どもスタッフ”や“子ども審査員”が一貫して携わることも特徴としています。

受付する様子。マスクの上からでも、生き生きとした様子が伝わってきます。

子どもスタッフが深堀りする映画

会場では多くの子どもスタッフの出迎えを受けてシアターに入りました。外国映画の吹き替えは子どもを含むボイスオーバー、すなわち生吹替で行われ、独特な臨場感に包まれた鑑賞体験となりました。子どもたちはボイスオーバーの実演のために、数か月にわたるワークショップで発声からセリフ回しの練習を重ねたといいます。

ボイスオーバー(生吹替)の様子。研ぎ澄まされた集中力が、音声からも伝わってくるようでした。

 

上映後には、子どもスタッフが事前に監督をインタビューした映像も用意されていました。映画のテーマや監督その人を深堀りする頼もしいやり取りや内容は、鑑賞を終えたばかりの映画にもう一度引き寄せられる魅力がありました。

外国人の監督たちとの会話は、翻訳者を介してだけでなく、英語で自ら会話する子どもたちもいました。

映画に学び、親しむ

映画を見て選出して、セリフを覚え練習して、はたまたインタビューを通じて監督と語り合ったり、マナーCMを撮影・編集したり、これらの数々の活動に要する時間は相当でしょう。それ以上に、“映画”を介してその内と外に実に多角的に関わっていることがうかがえました。1年近くをかけるという活動は、単に映画に親しむだけではなく、映画に関わる人、モノ、国、技術、職、テーマ等との接点となり、社会や文化に目を向ける大きなきっかけになっていることと思います。

映画の選考会の様子。プレゼン力、判断力が鍛えられそうです。

司会の様子。最終日には、締めくくりを自分の言葉でしっかりと話されていました。

子ども×映画×京都~これからの活動に寄せて~

4年ぶりにコロナ禍以前の形式での実施に至ったという今回の映画祭、その充実感や手ごたえは、会場の子どもスタッフの熱気や表情からも伝わってきました。鑑賞者として見知った場面はごく一部ですが、スタッフとして、あるいは“映画”を介して運営に関わることで得る可能性の広がりに期待がふくらみます。映画祭以外にも、“映画”を通じて国内外の文化芸術や多様な価値観に触れる機会の創出に努めようと新たなワークショップを積極的に設けているという同団体の取り組みは、子どもたちと“映画”の接点をより深めていくことでしょう。日本映画発祥の地・京都の映画文化を支える次世代の育成と活躍につながる本事業の今後に期待しています。

記:髙見澤こずえ(京都府文化芸術課・専門人材)
編集:大賀由佳子(京都府文化芸術課・専門人材)

令和5年文化力チャレンジ補助金採択事業
『第29回京都国際子ども映画祭』概要

会期|2023年8月4日(金)~6日(日)
会場|京都文化博物館3階フィルムシアター
主催|特定非営利活動法人キンダーフィルムフェスト・きょうと
詳細|https://www.kff-kyoto.com/(外部リンク)