READING KYOTOHOOPを深める

[事業レポート]アスレチック型コンサート~オーケストラと遊ぼう!~

山城地域|精華町

 

多数の音楽ホールによって豊かな音楽体験が提供される山城地域。今年度は、文化とサイエンス&テクノロジーが融合したけいはんな学研都市を舞台に2つのプログラムを開催しました。

音楽ホールの上質な“音”を身体で感じる「アスレチック型コンサート~オーケストラと遊ぼう!~」では、即興演奏家の片岡祐介氏をファシリテーターに迎え、けいはんな学研都市の文化の要であるけいはんなホールで、同ホールを拠点とするけいはんなフィルハーモニー管弦楽団とともに、ワクワクする“遊び”を散りばめたプログラムを展開。

そんなコンサート当日の様子を、昨年度のアスレチック型コンサートの会場となった「文化パルク城陽」で文化事業の企画や運営を担う西田陽子さんに取材いただきました。

 

 

令和6年度京都府地域プログラム(山城)事業レポート
アスレチック型コンサート~オーケストラと遊ぼう!~

全身で音を感じるアスレチック型コンサートの様子

 昨年度、当館・文化パルク城陽で実施した初のアスレチック型コンサートは企画段階から綿密に進められ、担当者の熱い思いが直球で伝わって来るものであった。何より、その段階で作り手が楽しんでいたのだ。今回もどれだけの時間と人の力が注がれたことだろう。この観客で埋め尽くされた会場を見て、もうすぐ始まるコンサートへの期待が湧きあがった。

 前回同様に片岡氏と奏者2名が舞台せりに腰掛けるスタイルで演奏が始まる《かえるの合唱~本気version》。徐々にあちこちから音が聴こえてくる、意表を突いた始まりに、子ども達の顔が輝きはじめる様がまぶしい。

客席のあちこちから音が聴こえてくる《かえるの合唱~本気version》

 

 次世代へ文化を継承していく、という面で、クラシックを含めた伝統文化の良さを伝えること、人を集めることは時間と労力が必要な課題。芸術文化がもたらす影響は誰もが知るところであり必要不可欠なものであることは間違いない、にも関わらず実際、あらゆることが多様化されている今、芸術文化はまさに嗜好品であり選び放題、しかもマストなものではないと考える人も少なくない。

 アスレチック型コンサートは「既存のクラシックコンサートの枠からはみ出すことも必要である」と知らしめてくれる。参加した人々が音楽の楽しさを経験し、その楽しかった記憶が残る。そして次の扉を開けることによりどんどん広がっていく世界を体験できる。クラシック公演の聴き方、運営の仕方、今ある「常識」を覆すほどの新しい風が吹くかどうか、疑問はあるが、自らチケットを買ってホールに足を運ぶ、という行為が非日常を楽しむ日常となり、音楽は楽しい、ということを経験する過程を経て、文化を継承しながら新しさを生み出すことは可能なのではないか、と感じた。

 

 最後の曲、ワーグナーの《ローエングリン》で、片岡氏が「音楽を聴いてジワーっとなったことありますか?」と問いかける。そう、その感覚! 身体の力を抜いて、ポカーンと口を開けてリラックスして耳を傾ける、ということ。「ジワーっと来る」その感覚は一生忘れられない大切な出会いとなる。

 舞台にはスポットライトがあたり、演者は自信に満ちて輝きを放つ。同様に素晴らしい音楽に出会ったとき、来場者も輝きを放つ。その瞬間こそがコンサートの素晴らしさである。

 アスレチック型コンサートはその名のとおり、舞台と客席が作り上げるコンサートの形を具現化したもの。戸惑うことなくアグレッシブに参加した観客の満ち足りた表情が成功を物語っていた。

音楽ホールでオーケストラの演奏を楽しむ来場者たち。

トップに戻る

 

記事執筆・写真

講評文執筆|西田陽子(NISHIDA Yoko)

公益財団法人城陽市民余暇活動センター文化事業部主査。3歳から始めたピアノとの出会いにより、音楽が生活の一部となる。民間企業を経て、2004年から現職場に勤務。地域密着にこだわり「つないdeつむぐプロジェクト」を立ち上げ、市民参加型事業をはじめ、文化パルク城陽の各種事業の企画・運営と地域の文化振興に携わっている。

 

写真|大島拓也(OSHIMA Takuya)

トップに戻る

 

令和6年度京都府地域プログラム(山城)
『アスレチック型コンサート~オーケストラと遊ぼう!~』

日時|2025年1月11日(土)
   13:00~受付会場/14:00開演
会場|京都府立けいはんなホール メインホール
対象|小学生以上~大人
来場数|計648人 (定員900人)
出演|片岡祐介(音楽ファシリテーター)、けいはんなフィルハーモニー管弦楽団(演奏)、冨田健一(指揮)

▼プログラム(曲目)

・どこから聴こえてくる?~《かえるの合唱》本気version/片岡祐介編曲
・雷鳴と電光/J.シュトラウス2世
・ワルツィング・キャット/L.アンダーソン
・オーケストラの楽器紹介メドレー/片岡祐介編曲
・カルメン前奏曲/G.ビゼー
・セレナータ/L.アンダーソン
・ハンガリー舞曲第6番/J.ブラームス
・エルザの大聖堂への行列(歌劇《ローエングリン》より)/R.ワーグナー

出演者のプロフィール等の詳細は▼こちら
https://kyotohoop.jp/program/yamashiro2024/

 

 

トップに戻る

(記事執筆:西田陽子(公益財団法人城陽市民余暇活動センター))