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【事業レポート】みんなで歌おう!合唱プロジェクト | 本編レポート【後編】

山城地域|笠置町、和束町、南山城村

目次

 

山城地域の笠置町・和束町・南山城村(以下、相楽東部地域)を舞台に、2025年6月から7月にかけて、“歌”で人と人がつながる「みんなで歌おう!合唱プロジェクト」を実施しました。本編レポート【前編】に続く【後編】では、南山城村で「やまなみシルバーコーラス」の指導者を務める髙原和子氏の所感とともに、コンサートの様子や合唱プロジェクト全体について振り返ります。

▶体験編レポートはこちら(リンク)
▶前編はこちら(リンク)

「YMCサマーコンサート」の様子

令和7年度京都府地域プログラム(山城)
「みんなで歌おう!合唱プロジェクト」
コンサート概要

公演名 | YMCサマーコンサート
日 時 | 2025年7月27日(日)14:00開演 / 13:00~ 受付開始
場 所 | 南山城村文化会館やまなみホール
出 演 | やましろミュージックキャンプ参加者22人、合唱プロジェクト参加者54人
     YMC講師 | 木村悦子(ヴァイオリン)、村岡紹子(ヴァイオリン)、
     灘儀育子(ヴィオラ)、後藤敏子(チェロ)、南出信一(コントラバス/指揮)
合唱講師 | 竹内直紀(テノール)、東志奈(ソプラノ)
参 加 | 無料・要申込み
来場者 | 253名
主 催 | やましろミュージックキャンプ実行委員会(京都府、笠置町、和束町、南山城村、
     相楽東部広域連合、相楽東部未来づくりセンター)

1. 音楽でつながる弦楽アンサンブルと合唱

2025年で4回目を迎えた「やましろミュージックキャンプ」(以下、YMC)は、弦楽器を演奏する子どもたちが相楽東部地域に集まり、やまなみホールでプロの弦楽器奏者の指導を受けられる貴重な機会である。このYMCと連携しコンサートで共演することで、地域で開催される文化芸術事業への関心を高め、より多くの地域住民が来場者としてホールに足を運ぶきっかけを創出することも「みんなで歌おう!合唱プロジェクト」の狙いの一つであった。
YMC参加者は2泊3日の合宿形式で練習を重ねる一方、合唱参加者は4回のワークショップで舞台に立つ準備を進め、それぞれがコンサートに向け、集中して練習に取組んだ。コンサートの1日だけという限られた時間の中で、双方の参加者が演奏を通して関わりを広げていく様子を髙原氏が語った。
「開演前、YMCの子どもたちのソロやデュオによるロビーコンサートが開かれ、一般の来場客に混ざり鑑賞した合唱参加者は、パッションがあふれる演奏を熱心に聴いていました。一方、YMC参加者も、舞台で演奏する自分たちの後ろで、普段は接する機会が少ない地域の人たち、さらに合唱という別の演奏形態の人たちと共演しました。同じ日に同じ舞台で一つの曲を演奏するという経験を通して、両者は音楽が生み出す熱気を共有し、また、自分たちとは違う環境で音楽に取り組み、向上心を持って練習に励む人がいることを認識しました。それは、音楽的な視野を広げるという意味で、とても貴重な経験になったのではないでしょうか」

小学4年生~高校3年生の22名が参加したYMCの練習風景(スタッフ撮影)

2. 活気に溢れたやまなみホール

やまなみホール開館当初からホール事業に深く関わってきた髙原氏に、コンサートの舞台となったこのホールの文化的な背景について伺った。

「木津川やまなみ国際音楽祭(※)が開催された時代、プロの演奏家がこのホールで数々の素晴らしい音楽を奏で、その経験に地域の人たちは育てられてきました。『音楽という素晴らしい文化に触れてもらいたい』という、ホール建設を推し進めた人たちの想いも今に引き継がれ、舞台に立つことや音楽を鑑賞することをこのホールで楽しもうという空気がこの地域にはあります」

(※)「木津川やまなみ国際音楽祭」
1993年~2007年に開催されたクラシック音楽祭。国内外で活躍する演奏家が集い、オーケストラや室内楽など数々の演奏を行った。

YMCサマーコンサート当日は253名の来場者を迎え、開演前の時間には、ロビーコンサートで演奏するYMC参加者や、その演奏を聴く合唱参加者、そして地域の来場者など多くの人で賑わった。やまなみホールは、地域の音楽文化を育むだけでなく、人々が交流し、つながりを深めるコミュニティの場として、この日音楽を楽しみに集まった人たちの活気に包まれていた。

1991年に建築家の黒川紀章氏の設計によって完成されたやまなみホール(スタッフ撮影)

YMC参加者・合唱参加者・来場客が、南山城村の景観を背景にしたロビーコンサートを楽しんだ

3. YMCと合唱の特別な舞台~いよいよ本番!

7月27日(日)14時、YMCと合唱の特別な舞台の幕が開けた。コンサート前半は、YMC参加者による弦楽アンサンブルのステージ。イタリア・バロック時代の作曲家コレルリ《合奏協奏曲第12番ラ・フォリア》や、YMC講師による演奏が披露され、会場は弦楽器が奏でる温かな音色に包まれた。
コンサート後半、合唱参加者が舞台に登場。テノール歌手の竹内直紀氏による、プッチーニ作曲歌劇《トゥーランドット》より「誰も寝てはならぬ」で、合唱参加者たちは4小節の合唱パートに加わった。その後、竹内氏とソプラノ歌手の東志奈氏によるデュエットによるヴェルディ作曲《椿姫》より「乾杯の歌」でも、合唱参加者がその歌声を響かせた。YMC参加者によるホルスト作曲《セントポール組曲》に続き、プログラムの最後はヘンデル作曲オラトリオ《メサイア》より「ハレルヤ」。見事に調和したYMC参加者の弦楽アンサンブルに合わせ、合唱のソプラノ・アルト・テノール・バス4声部が息の合った歌唱を披露した。アンコールでは、来場者も一緒に岡野貞一作曲「ふるさと」を歌い、コンサートは感動のうちに終演した。
この舞台を客席で鑑賞した髙原氏は、「最初はできないと不安がっていた合唱参加者たちですが、舞台上ではスターに見えました。単なる素人の集まりではなく、『演奏するんだ』という、本番ならではの真剣な空気が客席まで伝わってきました。「乾杯の歌」でプロの声楽家との共演を果たし、「ハレルヤ」という難曲に挑戦することで、歌うことの真の喜びを味わったのではないでしょうか。YMCの弦楽アンサンブルとの共演や、最後に来場者と一緒に歌ったアンコールの《ふるさと》など、仲間と共有した感動はかけがえのない経験になると思います」と、合唱参加者がこのプロジェクトで得た経験の価値を示した。

(左上)YMC参加者による弦楽アンサンブルとその演奏に聴き入る来場客の様子
(右上)YMC講師たちの演奏風景
(左下)ヴェルディ作曲歌劇《椿姫》より「乾杯の歌」の一場面
(右下)ヘンデル作曲オラトリオ《メサイア》より「ハレルヤ」の演奏風景

4. 合唱プロジェクトが地域にもたらしたこと

コンサートの数日後、髙原氏は、コンサートを鑑賞した地域コーラスのメンバーから、「やっぱりステージに立たなあかんね。私もあの舞台に立ちたかった」という言葉を聞いた。それを踏まえ、髙原氏は、合唱ワークショップが地域にもたらしたことについても語った。

「鑑賞した地域の人は、コンサートの日、舞台に立つ身近な人の姿に自分自身を重ね、ドキドキする気持ちや高揚感を共有していたと思います。つまり、合唱参加者だけでなく鑑賞者までもが、舞台に立つことの価値を再認識したのです。やまなみホールで音楽を共有した一人一人の価値認識は、彼らの次の文化的な取組へとつながり、地域に文化的な活力をもたらすでしょう。その意味で、この合唱プロジェクトは大きな成功を収めたと言えると同時に、私たちのような地域で文化的な活動をする者が、協力し知恵を出し合って、この成功を引き継いでいくことが重要だと思います。」

「ハレルヤ」の歌唱にチャレンジし、YMCの弦楽アンサンブルと共演することを目指した合唱プロジェクトの本編は、合唱参加者や地域の人たちに、普段の文化活動では意識していなかった、仲間と力を合わせて挑戦する喜びや、やまなみホールを拠点に音楽を楽しむ文化が根付いているという地域の豊かさを認識する機会をもたらした。このプロジェクトで育まれた人と人とのつながりが地域の文化活動で生き続け、日常に戻った合唱参加者や地域の人たちが、創意工夫しながら、自らの文化活動を楽しんで続けてくれることを期待したい。

終演後、ロビーでの集合写真

5. YMCサマーコンサート来場者の声

・コンサートで都会的なセンスを感じた上に、「ふるさと」をいつになく感じられて幸せな気分に浸れました。
(南山城村・70代)

・弦楽器はとても迫力があり、大勢で歌うととてもにぎやかでした。
(木津川市・~10代)

・オペラをライブで聴いたのは初めてで、声量の凄さにまず驚き、感動しました。地域や世代を超えて、音楽をみんなで楽しみましょうという取組がやっぱり良いですね。
(城陽市・60代)

・弦楽器、合唱、鑑賞者が参加する曲など、様々なプログラムがあり、音楽の幅広さを再発見する機会となりました。
(綾部市・20代)

・ハレルヤコーラスも綺麗で迫力があり感動しました。舞台で笑顔で歌っている少女がとても印象的でした。
(三重県・70代)

コンサートの出演者に拍手を送る鑑賞者

記事編集・執筆:西尾晶子(京都府地域アートマネージャー・山城地域担当)
写真撮影:スタジオ記シ

講評者プロフィール

 

髙原和子 | たかはら かずこ

木津川市音楽芸術協会会長。木津川市社会教育委員会委員長。
ソプラノ歌手として地域の舞台に立ちながら、やまなみシルバーコーラス(南山城村)や木津川市少年少女合唱団、公民館サークル「歌おう心のうた」(木津川市)の指導者として、長年に渡り地域の音楽振興に取組んでいる。

▼講師のプロフィールなど、プログラム全体の詳細はこちら

https://kyotohoop.jp/program/yamashiro2025/