山城地域|和束町
目次
山城地域の最南部に位置する笠置町・和束町・南山城村(以下、相楽東部地域)を舞台に、2025年6月から7月にかけて実施した、“歌”で人と人がつながる「みんなで歌おう!合唱プロジェクト」。第一線で活躍するテノール歌手の竹内直紀氏、山城地域を拠点に活動するソプラノ歌手の東志奈氏を講師に迎え、気軽に参加できる「体験編」とコンサート出演に向けて合唱に取り組む「本編」の2種類のワークショップを開催し、本編参加者が「やましろミュージックキャンプ」(※)参加者とコンサートで共演しました。今回は体験編ワークショップのレポートをお届けします。
(※)「やましろミュージックキャンプ」
相楽東部地域の豊かな自然の中で、弦楽器を演奏する子どもたちがプロの演奏家による指導を受けられるイベント。2025年は4回目の実施。 https://www.pref.kyoto.jp/yamashiro/event/ymc_info.html(外部リンク)
▼令和7年度京都府地域プログラム(山城)
「みんなで歌おう!合唱プロジェクト」体験編ワークショップ概要
日時 | 令和7年6月7日(土)14:00~16:00
会場 | 和束町健康福祉交流センター cha nova
講師 | 竹内直紀(テノール歌手)、東志奈(ソプラノ歌手)
伴奏 | 植松さやか
参加 | 無料・要申込み
人数 | 70名
1. 合唱プロジェクトの入り口「体験編」
合唱経験者も、普段はあまり歌う機会がない人も、誰もが気軽に集い、歌の楽しさを体感する機会として体験編ワークショップ(以下、体験編)を開催した。参加者がプロの声楽家である2人の講師の魅力に直接触れることや、「やましろミュージックキャンプ」参加者との共演に向けた本編ワークショップ(以下、本編)への参加を促すことを視野に入れ、体験編は合唱プロジェクト全体の入り口となるよう構想された。
当日は、相楽東部地域をはじめ近隣の木津川市や精華町、さらに京都市や舞鶴市などから、募集定員を超える70名が集まった。近所に住む参加者が、会場の楽しそうな様子に思わず家族を呼びに行く場面も見られるなど、気負わずに楽しく参加できる雰囲気の中でワークショップは始まった。
第1部では、竹内氏より、歌うために必要な姿勢や呼吸法、声の出し方など、身体の使い方に関する基礎的な内容について説明があった。各項目の説明の後に、参加者が実際に動作を行う時間が設けられ、実践を交えながら歌うためのコンディションが整えられた。
体験編ワークショップ
【プログラム】
■第1部
○声を出す前に~歌うための身体の使い方
■第2部
○実際に歌ってみよう!
・世界の国からこんにちは
・春の小川
・われは海の子
・紅葉
・雪
・七つの子
・花の街
・さんぽ(「となりのトトロ」より)
・上を向いて歩こう
・故郷
■第3部
○ミニコンサート
オペラ<椿姫>より「乾杯の歌」(ヴェルディ作曲)
歌:竹内直紀(テノール)、東志奈(ソプラノ)
○フィナーレ!みんなで歌って踊ろう!
「フニクリフニクラ」(デンツァ作曲)
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(写真左)ワークショップ会場の様子
(写真右)左から講師の竹内直紀氏と東志奈氏、ピアノ伴奏の植松さやか氏
猫背にならないよう肩を正しい位置に戻し、姿勢を整える動作
“吸う”よりも“吐く”方が大事。腹式呼吸で息を吐き切る練習
普段の生活でよく使う挨拶を歌で発声してみる発声法
2. 実際に歌ってみよう!
第2部では、参加者が日本の唱歌や歌謡曲など11曲を歌った。ここでは、曲ごとに細かい指導を入れるのではなく、歌詞の中に表現された自然の風景や季節の色彩などをイメージし、メロディの美しさを感じながら、気持ちを込めて歌うことが重視された。
歌唱曲は、誰もが一度は耳にしたり歌ったりしたことのある、馴染みのある楽曲が中心であったため、初めて集まり、お互いを知らない参加者同士でも自然と一体感が生まれ、「みんなで歌う」ことを楽しむ姿勢が見受けられた。
第2部の最後には、本編で取組むクラシックの合唱曲、ヘンデル作曲オラトリオ《メサイヤ》より「ハレルヤ」の冒頭部分を歌ってみることに。比較的歌いやすく華やかな冒頭のメロディを歌うことで、参加者が「ハレルヤ」の魅力を実際に感じる機会となり、本編への参加意欲を高めることを目的とした試みであった。
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「春の小川」や「われは海の子」などの唱歌を、歌詞カードを見ながら歌う参加者
3. 講師によるミニコンサート
第3部は講師2人によるミニコンサートを開催。本編ワークショップで取り組む合唱曲、ヴェルディ作曲オペラ《椿姫》より「乾杯の歌」のソロ部分を、ソプラノの東氏とテノールの竹内氏が披露した。正装して登場した2人の姿に参加者からは歓声が上がり、窓の外に広がる和束町の茶畑を背景に歌い上げられたオペラの名曲を、皆が堪能する時間となった。
最後に、「鬼のパンツ」でおなじみの「フニクリ・フニクラ」(デンツァ作曲)を講師と参加者が全員で歌い、ミニコンサートはフィナーレを迎えた。リズミカルなメロディに合わせて参加者も歌や手拍子で参加し、会場が一体となったところで2時間の体験編が終了した。
オペラ《椿姫》より「乾杯の歌」を披露する竹内氏と東氏
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楽しい雰囲気の中ワークショップが終了
4. 参加者の声と講師2人の所感
▼参加者の声
・オペラ歌手の声を直に聴けてとてもよかったです。「ハレルヤ」を(本編でも)歌ってみようと思いました。(南山城村・80代以上)
・先生のおもしろく楽しいご指導のおかげでとても楽しく歌うことができました。ホールもきれいで景色もよかったです。(京都府内・30代)
・コーラスのサークルに入っています。とても楽しく日常生活にハリが出ます。皆で声を合わせて歌うことの楽しさをしみじみ味わいました。(木津川市・60代)
・新しいトンネルが出来、宇治田原と和束の距離が短縮されました。お茶どころ合同でなんてイベントがあってもおもしろいなーと勝手に思ったりしました。(宇治田原町・70代)
▼講師の所感
「本編では本格的な合唱曲を歌うことになるので、体験編では基本的に楽しく歌ってもらい、本編で歌う楽曲を扱う際も“難しくない”というイメージを持って本編に参加してもらえるように意識しました。また、それぞれに経験値が違う参加者にできるだけ寄り添い、参加者の皆さんと一緒にワークショップを創り上げることを大切にしました」(竹内氏)
「こんなに多くの人たちが合唱に興味を持ち、体験編に集まってくれたことに驚きました。初心者だけでなく経験者の参考にもなる発声の指導などもあり、竹内先生の楽しい指導が、本編参加を迷う人の背中を後押ししたと思います」(東氏)
2人の講師による指導とサポートにより、参加者は「みんなで歌う」ことの楽しさを体感することができた。その結果、体験編をきっかけに本編にチャレンジすることを決めた参加者もおり、コンサート出演に向けた本編への気運が高まっていった。
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記事執筆:西尾晶子(京都府地域アートマネージャー・山城地域担当)
写真撮影:スタジオ記シ
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