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Kaico-参加型アートプロジェクト「町を縫う」|2024年度活動展開のご紹介

丹後地域|宮津市、与謝野町

 

2023年度丹後地域プログラムとして実施した『Kaico-参加型アートプロジェクト』。丹後地域の資源(マテリアル)である「布」と「糸」を使う「町を縫う」という取組を通して、町が持つ個性を一つの作品に作り上げ、展示までを参加者の皆さんに体験いただきました。

京都:Re-Search実行委員会の主催で実施したこの取組を、2024年度には地域での文化活動、イベント、商品開発に活用いただきましたのでご紹介します。

 

「Kaico」とは?

丹後地域において、蚕から生成される資源を大切にしてきたことを、懐かしく思い(懐古)、振り返り見る(回顧)ことで、思いがけない出会い(邂逅)を創造する文化活動。

2023年度の詳細

https://kyotohoop.jp/images/2024/03/KAC2023report-_WEB_open.pdf#13

 

 

①作品展示

「京都には海がある。熱気球プロジェクト」

展示日時|2024年9月28日(土) 6:00-9:00
     2024年10月5日(土) 6:00-9:00
会場|京都府立丹後郷土資料館野外
主催|京都府立丹後郷土資料館 カルチュラル・エデュツーリズム・カウンシル

丹後郷土資料館の壁面に「町を縫う」作品を展示しました。
気球からの作品鑑賞は特別なものとなりました。

 

「パシャパシャ丹後-はた織りと共にある暮らしを観る」

展示日時|2024年10月30日(木)
     2024年11月17日(日)
     2024年12月1日(日)
会場|旧尾藤家住宅横庭
主催|京都:Re-Search実行委員会
会期前日の内覧会、会期中の快晴日の週末に展示しました。

 

 

②「町を縫う」ワークショップの開催

「ヤマーソニック2024」

実施日時|2024年8月4日(日) 10:00-16:00
会場|かや山の家
主催|ヤマーソニック実行委員会
地域発のイベントにワークショップ出店として、Kaicoのロゴのシルクスクリーンと「町の形」を縫うワークショップをご活用いただきました。

 

「まちづくりスタディツアー in MIYAZU」

実施日時|2024年8月9日(金) 10:40-12:30
会場|前尾記念クロスワークセンターMIYAZU
高知、長野、福井の高校生が宮津に集まり、まちづくりを学ぶツアーの冒頭に、地域の課題を魅力に変えるアートプロジェクトの手法を学び、ワークショップを通じて、他者を理解するアイスブレイク・チームビルディングに「町を縫う」ワークショップをご活用いただきました。

 

 

③商品開発

「丹後へGo 柿渋レジャーシート」いとをかしkomame CRAFT

2023年度の出張ワークショップに参加した、宮津市上世屋で和紙の製造及び商品開発をする和紙クリエイター・大江歩氏(いとをかし)がプロジェクトの発想に共感し、伝統工芸に取り入れ、発信したいとの想いから生まれた商品。「町の形」を柿渋染めしてご活用いただきました。

※本商品は、“株式会社アーバンリサーチが地域共創を目指し取り組む、ローカルコミュニティプロジェクト「JAPAN MADE PROJECT」の「SHARE THE LOCAL 丹後」開催に合わせて開発された商品です。

【商品ステイトメント】

紙を貼る 柿渋を塗る また紙を貼る また柿渋を塗る
繰り返し重ね合うことで生まれる色彩
幾年も年を重ねて直しながら味わいの増していく

町の風景も同じように古いものと新しいものが重なり合って新しい町のデザインが次々と生まれていく。
そんな共通点から、この柿渋x和紙シリーズにあるデザインモチーフは、丹後半島の日本遺産『丹後ちりめん回廊』の周辺で町歩きして見つけた「町の形」

 

■開催場所/期間

[京都]アーバンリサーチKYOTO
 2024年8月8日(木)〜8月23日(金)
 https://www.urban-research.co.jp/shop/store1/1_8/

[東京]アーバンリサーチSTORE ソラマチ店
 2024年9月6日(金)〜9月24日(火)
 https://www.urban-research.co.jp/shop/store8/8_3/

[大阪]アーバンリサーチららぽーとEXPOCITY店
 2024年10月4日(金)~10月17日(木)
 https://www.urban-research.co.jp/shop/store1/1_46/

 

 

Kaico-参加型アートプロジェクト「町を縫う」のその後

作品「町を縫う」が、約年振りに丹後郷土資料館に展示された。 

のべ352人の手で縫い付けられた「町の形」。少し色あせた箇所もあったり、綻(ほころ)びがあったり、キャプションの中に友人や知り合いの名前を見つけた声が聞こえたり、自分が縫いつけた「町の形」を見つけたり、時間が経過してもコミュニケーションを育む作品となっている。 

 

旧尾藤家住宅横庭では、横向に作品展示をしたことで今までとは違った距離感で作品を鑑賞することができた。 

 

 

ヤマーソニック2024のイベントでは高校生が楽しそうに針を持ち、自分の好きな「町の形」をブランケットステッチで縫っていく。

そして次の参加者へステッチを伝授していく。

地域の機織り仕事をしていた人たちからは「贅沢なワークショップですね~」と、シルク生地の貴重さも一緒に、若者たちに伝える。

色選びで十人十色の「Kaico」のロゴが生まれ、Tシャツやバッグがオリジナルなものになり、参加者の暮らしに仲間入りする。

 

まちづくりツアーに参加した高校生たちは、お互い行ったことのない土地から来たもの同士がチクチクと丹後の「町の形」を縫いながら、打ち解けていく。

「町の形」を縫い付けると、「Kaico」のロゴをプリントした箇所に個性が光を増す。

誰かが見つけた「町の形」を、別の誰かが自分の持ち物に縫い付け、「町の形」も少しずつ変形していく。

言葉ではないコミュニケーションを通じて、知らない土地の誰かとも繋がっていく。

 この時間の思い出が土地の思い出にもなっていく。

 

 

いとをかしさんの「丹後へGo 柿渋レジャーシート」は、伝統工芸にアートプロジェクトの要素を取り入れた試みだった。モノづくりを生業とする人にもアートを通じて新しい出会い(商品)へのインスピレーションとなった。

 

 

これらの展開は、2023年春にアートプロジェクト「町を縫う」を企画した当初には想像だにしていなかった情景を生み出しました。

 

体験や感性をシェアしていくことが、地域というコミュニティを活発にしてくれると感じます。

アートをはじめとした「何かをともに創り出す」行為を通じ、日常に心の豊かさをもたらす活動が多種多様なコミュニケーション、思いがけない出会い(邂逅)を生み、さらに地域文化へと根付いていくことを願います。

 

(記事執筆:甲斐少夜子(京都府地域アートマネージャー・丹後地域担当))