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【事業レポート】まねてまねぶ伝統芸能「まねっこ浄瑠璃」まねっこ人形

南丹地域|京丹波町

京丹波町の人々が暮らしの中で受け継いできた民衆による伝統芸能「和知人形浄瑠璃」。
2025年の春から秋にかけて、アートユニット・山成研究所の二人の視点を通じてその魅力に迫るリサーチとワークショップを行いました。
人形遣い・三味線・太夫の所作などを“まねっこ”して、和知人形浄瑠璃を体感したワークショップ「まねっこ浄瑠璃」。その二つ目のワークショップとなる「まねっこ人形」について、和太鼓奏者であり森の京都文化観光サポーターとして京丹波町の伝統芸能団体をサポートしている凛さんに取材いただきました。

開催概要

ワークショップ「まねっこ人形」
日 時|2025年10月12日(日)10:00~12:00
会 場|大迫区公民館
参加費|無料
講 師|和知人形浄瑠璃会(人形遣い・大田喜好、人形遣い・春田貢)
    山成研究所(辰巳雄基、うー、アシスタント:中井梓太郎)
参加者|8名

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まねてまねぶ伝統芸能
「まねっこ浄瑠璃」まねっこ人形

ワークショップ「まねっこ人形」は、和知人形浄瑠璃発祥の地である大迫地区の公民館で実施された。会場の向かいには、和知人形浄瑠璃で使用される貴重な人形を保管する蔵があり、参加者は普段は間近で見ることのできない人形を鑑賞するだけでなく、特別に人形に触れ、実際に操る体験も行われた。

写真撮影|凛

最初は、貴重な人形に触れることを躊躇する参加者も見られたが、和知人形浄瑠璃会の皆さんが終始穏やかで温かな雰囲気で導いたことで、次第に積極的に取り組む姿が見られた。参加者は「姫や花嫁役などを演じる上流の女形人形」や「男性の武家姿の人形」など、多様な種類の人形に触れ、精巧な作りに驚嘆していた。

写真撮影|凛

和知人形浄瑠璃は、人形一体を三名で操る一般的なスタイルとは異なり、一名で操る独自の技法が特徴である。この操作方法についても説明があり、片手で首と右腕を同時に操作する技法や、首の角度による“感情表現”、さらに重心移動や“間”の取り方による高度な表現技法が紹介された。参加者からは思わずため息が漏れる場面も見られ、技術の奥深さに感銘を受けていた。

ワークショップでは、まず「首(かしら)づくり」から取り組んだ。題材には、和知人形浄瑠璃オリジナル演目『長老越節義之誉(ちょうろうごえせつぎのほまれ)』より「子別れの段」の一部が用いられ、参加者は母と子が別れる悲しい場面を演じる設定で制作を進めた。

白く塗られた卓球ラケットの形をした合板を首(かしら)に見立て、参加者は「無表情の目」と「悲しい目」という二種類の表情を描き分けた。「悲しいって、どんな目だろう?」という声が上がり、自らの顔で表情を再現しながら試行錯誤する姿が印象的であった。感情を表現するためには、登場人物の心情を想像し、物語に寄り添う姿勢が求められる。この工程は、役を演じる上での重要な探求であり、本ワークショップの大きな山場となっていた。

写真撮影|凛
写真撮影|凛

続いて胴体部分の制作へ移り、和知四大芸能の一つ「和知文七踊り」の浴衣模様(波と丹波栗)をモチーフにした型染め布を使い、参加者は布の上に寝転んで型取りを行った。さらに、ハンガーを用いて首と布を組み合わせ、帯で自身の腰に固定して「まねっこ人形」を完成させた。
完成後は、自作した人形を手に、語りに合わせて実際に演じた。和知人形浄瑠璃会の人形遣い・春田さんの指導のもと、人形のわずかな動きで感情を表現していく技を体感し、参加者は真剣に取り組んでいた。また、山成研究所の皆さんは進行と人形制作のサポートのみならず、春田さんの説明を参加者が理解しやすい言葉や動作に置き換えて伝えるなど、全体の学びを深める工夫が随所に見られた。

写真撮影|凛

今回のワークショップは、「触れる・つくる・演じる」という三つの体験を通して、参加者が物語と人形に深く向き合い、和知人形浄瑠璃の魅力に浸る貴重な機会となった。また、和知人形浄瑠璃会にとっても、参加者が示した強い関心と熱意に直接触れ得たことは、大きな励みとなっただろう。さらに、同会が出演する定期公演に足繁く通うファンの存在を改めて認識する契機ともなり、その出会いを非常に喜んでおられた。こうした交流は、地域の伝統芸能を引き継いでゆく団体の活力や発展をもたらすとともに、地域の文化を育む貴重な出会いとなった。

記事執筆

凛(Rin)

 

三重県鈴鹿市出身、京丹波町在住。
2003年、名古屋にて和太鼓プロチームを仲間と共に創設し、中心メンバーとして全国各地で演奏。2010年よりソロ活動を本格化し、日本国内にとどまらずこれまでにオランダ・ベルギー・アメリカ・アジア各国など海外公演も多数。ピアノやヴァイオリンなどの洋楽器、尺八や三味線などの和楽器に加え、オーケストラ・吹奏楽・書道・ダンス・ミュージカルなど、ジャンルを超えた表現者とのコラボレーションを重ねてきた。演奏活動のほか、演奏指導や楽曲提供も行い表現の幅を広げている。
また、地域文化の保護にも積極的に取組み、「森の京都DMO」文化観光サポーターとしても活動。京丹波町の無形文化財継承など、文化と土地、人と人とをつなぐ役割を担っている。
鈴鹿市「すずか応援アンバサダー」、同市文化事業団評議員も務める。

レポート一覧
「まねっこ浄瑠璃」まねっこ三味線
・「まねっこ浄瑠璃」まねっこ人形
「まねっこ浄瑠璃」まねっこ語り
「まねっこ浄瑠璃」まねっこ大行列

 

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