南丹地域|京丹波町
京丹波町の人々が暮らしの中で受け継いできた民衆による伝統芸能「和知人形浄瑠璃」。
2025年の春から秋にかけて、アートユニット・山成研究所の二人の視点を通じてその魅力に迫るリサーチとワークショップを行いました。
人形遣い・三味線・太夫の所作などを“まねっこ”して、和知人形浄瑠璃を体感したワークショップ「まねっこ浄瑠璃」。その最初のワークショップとなった「まねっこ三味線」について、和太鼓奏者であり、森の京都文化観光サポーターとして京丹波町の伝統芸能団体をサポートしている凛さんに取材いただきました。
開催概要
ワークショップ「まねっこ三味線」
日 時|2025年9月28日(日)
つくる 10:00~12:00
弾 く 13:00~15:00
会 場|京丹波町役場(本庁)1階・防災会議室
参加費|1,000円
講 師|秀野祐介(家具と陶 やがて)
和知人形浄瑠璃会(三味線・小林勝久、太夫・尾池吉嗣)
山成研究所(辰巳雄基、うー、アシスタント:中井梓太郎)
参加者|15名
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まねてまねぶ伝統芸能「まねっこ浄瑠璃」まねっこ三味線
京丹波町は、京都府の中部に位置し自然豊かな地域である。その中でも旧和知町は、丹波栗や丹波黒大豆の産地として知られ、和知人形浄瑠璃、和知太鼓、小畑万歳、和知文七踊りの四つからなる「和知四大芸能」が今なお息づく、文化的豊かさにあふれた地域である。
和知人形浄瑠璃は、一般的には身近に触れる機会の少ない芸能であり、伝統を重んじる分野でもある。そのため、山成研究所が和知人形浄瑠璃をどのように解釈し、その魅力をどのような形で提案をするのかが興味深かった。 
「まねっこ浄瑠璃」の第一回目のワークショップは、「まねっこ三味線」である。京丹波町の木材や身近な素材を組み合わせてオリジナルの三味線を制作し、さらに浄瑠璃の一節を練習するという企画である。企画内容を聞いた際、まず「まねっこ」という言葉に得心した。「まねっこ」という言葉は芸事の本質とも重なる。芸は、師匠の姿を見て真似ることにより深まっていくものだが、和知の四大芸能もまた、他地域から伝わった芸能を和知の人々が“まねっこ”をして磨き上げ、受け継いできた歴史がある。和知地域は古くから京の都と山陰地方を結ぶ交通の要衝として栄え、人の行き来が盛んであったこともあり、外から来た文化に対し寛容で、好奇心旺盛な気質を持つ地域であったと考えられる。まさに「まねっこ」の達人が育まれた土地と言える。

ワークショップ当日、会場には様々な形の木片や金具が並び、大人でも心躍る空間が広がっていた。
参加者は、まねっこ三味線制作者の秀野さんと山成研究所の辰巳さんから人形浄瑠璃で用いられる太棹三味線の構造と作り方について説明を受けた後、各自で制作を開始した。山成研究所の皆さんは、参加者の様子を丁寧に見守り、必要に応じて補助を行っていた。
部品の役割を理解した上で作る工程は、三味線や浄瑠璃への関心を高める良い機会となった。「敷居が高い」「難しい」という先入観を持たれがちな人形浄瑠璃に対し、本物の三味線でいきなりお稽古を始めるのではなく、大人でも楽しめる完成度の高い手作り楽器を通して第一歩を踏み出せる点は非常に有意義であった。




三味線制作後には、和知人形瑠璃会より三味線奏者・小林さん、太夫・尾池さんが講師として加わった。小林さんは出来上がった三味線を一丁ずつ調律したが、同じ材料と工程でも個体差があり、時間をかけて丁寧に調整されていた。続いて、和知人形浄瑠璃のオリジナル演目『長老越節義之誉(ちょうろうごえせつぎのほまれ)』の一節が披露され、参加者は三味線と太夫が呼吸を合わせて生み出す“間”や音の妙技に深く魅了されていた。

模範演奏の後には、参加者自身が制作した三味線で同じ一節に挑戦した。たった三本の糸から、いくつもの音を奏でることの難しさに驚きつつも、体験後には「楽しかった!」という声が多く聞かれ、三味線への興味が大きく広がっている様子であった。


ワークショップ終了後には、和知人形浄瑠璃会の公演を観たいという参加者が多く、さらに、「より深く体験したい」と三味線や語りの稽古に通う方が二名も現れるなど、今回の取組が功を奏し、和知人形浄瑠璃への関わりを深める大変意義ある機会となった。
今回の取り組みにより、参加者に芽生えた関心や感動は民俗芸能への理解を深めるとともに、地域文化への関心を高める契機となった。こうした取り組みの継続が文化振興および地域の魅力創出に寄与すると考える。

記事執筆
凛(Rin)

三重県鈴鹿市出身、京丹波町在住。
2003年、名古屋にて和太鼓プロチームを仲間と共に創設し、中心メンバーとして全国各地で演奏。2010年よりソロ活動を本格化し、日本国内にとどまらずこれまでにオランダ・ベルギー・アメリカ・アジア各国など海外公演も多数。ピアノやヴァイオリンなどの洋楽器、尺八や三味線などの和楽器に加え、オーケストラ・吹奏楽・書道・ダンス・ミュージカルなど、ジャンルを超えた表現者とのコラボレーションを重ねてきた。演奏活動のほか、演奏指導や楽曲提供も行い表現の幅を広げている。
また、地域文化の保護にも積極的に取組み、「森の京都DMO」文化観光サポーターとしても活動。京丹波町の無形文化財継承など、文化と土地、人と人とをつなぐ役割を担っている。
鈴鹿市「すずか応援アンバサダー」、同市文化事業団評議員も務める。
レポート一覧
・「まねっこ浄瑠璃」まねっこ三味線
・「まねっこ浄瑠璃」まねっこ人形
・「まねっこ浄瑠璃」まねっこ語り
・「まねっこ浄瑠璃」まねっこ大行列












