南丹地域|亀岡市
目次
京都府では、京都府の多様な地域性を活かして、文化芸術の力で地域を元気にするような活動であって、チャレンジ精神や創意工夫の見られるものを支援する、「文化力チャレンジ補助事業」を実施しています。 本事業では、京都府民が自らの住む地域の文化に誇りと愛着を持つこと、地域における文化芸術の担い手の裾野を広げていくことを目指しています。
「文化力レポート」では、文化力チャレンジ補助事業から、京都府域での文化芸術活動の動向や知見を京都府地域アートマネージャーなど、文化芸術の専門人材が取材した記事をお届けしています。
今回は、2024年冬、亀岡市にあるみずのき美術館<KYOTOHOOP記事>で開催された「HOZUBAG Mfg.(ホズバッグマニュファクチャリング)」とみずのき美術館の画材循環プロジェクト「巡り堂」のバックヤードを紹介する展覧会『作業する場がある』の背景から、展覧会の様子、各プロジェクトについて紹介します。
また、記事内では、本展覧会を企画されたみずのき美術館キュレーターの奥山理子さんとHOZUBAG Mfg.工場長の武田幸子さんにインタビューした内容も紹介しています。
前編(本記事)では、展覧会の様子についてお伝えします。

■亀岡で生まれた二つのプロジェクトによる展覧会の“はじまり”
HOZUBAG Mfg.と巡り堂。これらのプロジェクトは、世界に誇れる環境先進都市の実現に向け、2018年「かめおかプラスチックごみ ゼロ宣言」を行い、さらに、内閣府より2020年度「SDGs未来都市」に選ばれ環境に関する取組みの機運が高まっていた亀岡市で生まれました。
HOZUBAG Mfg.は、役目を終えたパラグライダーを解体・洗浄し、バッグなどに作り替える工場(こうば)です。巡り堂は、家庭などで不要になった画材・文房具を再利用できるようきれいに拭き上げ、新たな持ち主へ届ける、みずのき美術館のアートプロジェクトです。
それぞれのプロジェクトは人々に注目され、武田さんいわく、資源循環の好事例として「つるんと」理解されやすい一方、日頃の作業やその場で生まれている新しい可能性や心地良さなどを伝えきれていないもどかしさを感じていたと言います。そこで、なかなか知られていなかった各プロジェクトの「作業」と「場」に着目し、展覧会が企画されました。
「作業」と「場」をどのようにして伝えるか――。
その思いは、ユニークな展覧会名とフライヤーのデザインにも込められていました。
『作業する場がある』という展覧会名には、作業場があるその事実が、ありのままに表現されています。フライヤーは、巡り堂によってクリーニングされた絵の具や色鉛筆などの画材に、展覧会の開催情報を記載した帯を巻いた仕様で、フライヤーを手に取った瞬間からプロジェクトを体感できる工夫がなされていました。
■作業場の日常を紹介する展覧会
展覧会は、各プロジェクトの作業場の日常を捉えた写真や映像、作業場で使われる道具や画材・生地などのモノ、みずのき美術館所蔵の絵画作品の展示、作業体験コーナーの設置、企画者やゲストによる4回のトークイベントで構成されていました。作業場の一部を再現した展示は現場の雰囲気を醸し出し、作業場の日常の光景が浮かび上がるようでした。



展示会場では、来場者が自ら作業することで、作業の心地よさを感じ取ってもらうために、二つの体験の場が設けられていました。
一つは、パラグライダーの生地や付属のコードを、色や長さ・太さ別に仕分ける作業の体験です。生地もコードも色や形状が多様なため、言葉で明確に分類し仕分けることは難しいそうです。そのため来場者は、どのように分類するかなど互いに確認し合うこととなります。そこから、人によって異なる捉え方があることやその多様性の面白さに気づきます。体験の場を設けたことで、「作業」がもたらす心地良さやささやかな喜びを来場者に追体験してもらうことができ、武田さんは手応えを感じていました。

もう一つは、巡り堂が行っている画材の汚れを拭く作業の体験です。奥山さんによると、会場ではその場に集った初対面の人たちが作業を教え合ったり他愛ないおしゃべりを始めたりと、その場で交流が始まり、巡り堂の日常に重なる光景が生まれたそうです。
また、会場には、各プロジェクトの商品と画材の物販コーナーも設けられていました。



さらに、武田さんからは印象的な話もお聞きできました。写真家の成田舞さんが本展覧会のための撮影で工場を訪れた時のことです。HOZUBAGのスタッフに成田さんがいくつか質問をされる中で、あるスタッフが、「パラグライダーの生地が全て白色だったら、私は作業を続けられないかもしれない」と話したそうです。アップサイクルという作業自体が心地良いうえに、生地がカラフルであることで日々新鮮な気持ちで作業に取り組めるとのこと。本展覧会は、プロジェクトに携わるスタッフが、作業の喜びや原動力を再認識する機会にもなっていました。
一度は不要とされた資源を活かし、モノの循環を生み出している各プロジェクトについて、武田さんは「不要だと思うモノを別の視点で見るきっかけになれば」と語り、奥山さんは「ものを大切にしてみる気持ちを促せたら」と願っています。各プロジェクトは、モノの循環だけではなく、モノとの向き合い方も人々に届けています。
後編では、HOZUBAG Mfg.と巡り堂の作業場と取組みについてお届けしています。
▶後編レポートはこちら
記事執筆:杉 愛(京都府地域アートマネージャー・南丹地域担当)
■開催情報
会 期|2024年11月8日(金)〜12月22日(日)
※開館 金・土・日・祝 10:00〜18:00
会 場|みずのき美術館
入場料|一般400円、高大生200円、中学生以下無料
障害のある方及びその付添人(原則1名)は無料
主 催|みずのき美術館
共 催|HOZUBAG Mfg.
協 力|株式会社HOZUBAG 、THEATRE PRODUCTS、
一般社団法人ALL JAPAN TRADING、学びの森、親谷茂
詳 細|https://www.mizunoki-museum.org/exhibition/hozubag-megurido/(外部リンク)
〇みずのき美術館HP
https://www.mizunoki-museum.org/(外部リンク)〇HOZUBAG Mfg.HP
HOZUBAG(外部リンク)












