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[アーカイブ] 地域文化芸術を編集する実践講座|研修

中丹地域|オンライン

本記事は、2021年2月16日(火)・17日(水)に行われた、『地域文化芸術を編集する実践講座』をレポートした、WEBサイト【京都府地域文化創造促進事業】のアーカイブ記事です。

研修『地域文化芸術を編集する実践講座』

京都府では、府域における文化活動の振興を図るため、丹後、中丹、南丹、山城の4地域で文化・芸術活動を担う、もしくはこれから担っていくであろう人材を育成するための研修プログラムを実施しています。その一環として、中丹地域で『地域文化芸術を編集する実践講座』と題した講座やワークショップをおこないました。

日時|2021年2月16日・17日
場所|オンライン
主催|京都府
協力|京都:Re-Search実行委員会
助成|一般社団法人 地域創造「地域の文化・芸術活動助成事業」

◾️ 講座1『ローカルな視点で街を編集する』
日時|2021年2月16日(火)13:30~14:15
講師|影山裕樹(編集家、文筆家、メディアコンサルタント)

◾️ 講座2『アーティストとして街にどう関わるか』
日時|2021年2月16日(火)14:15〜15:00
講師|増本泰斗(アーティスト)

◾️ ワークショップ『ローカルメディアを考えるワークショップ』
日時|2021年2月16日(火)15:15〜16:15
講師|影山裕樹(編集家、文筆家、メディアコンサルタント)

◾️ ワークショップ『課題を抽出し検討する』
日時|2021年2月16日(火)16:30〜17:00
講師|影山裕樹・増本泰斗

◾️ワークショップ『企画立案実践ワークショップ』
日時|2021年2月17日(水)13:30〜16:00
講師|影山裕樹・増本泰斗

◾️ディスカッションとまとめ
日時|2021年2月17日(水)16:00〜16:45

本プログラムは京都府における新型コロナ感染症感染拡大に伴う緊急事態宣言の発令にともない、オンラインでの実施としました。

 

1日目

講座1『ローカルな視点で街を編集する』

本研修プログラムの始まりとして、影山裕樹さんから現在のメディアのあり方から読み取れる情報の扱いかたや、情報発信の変化をもとに、各地のローカルメディアについて等を話していただきました。

北九州市が発行する地域雑誌「雲のうえ」や城崎温泉での小説とタオルがセットとなっている取り組みなど、どのローカルメディアにおいてもが、地域の特性を他者の視点をもち、大衆全般にではなく、届けたい相手にむけて効果的な方法で届ける方法がとられていることを特筆として挙げられていました。また、メディアという言葉から想起されるテレビ、新聞などマスメディア、そしてインターネットやSNSなどの情報発信のみならず、街中(=公共)の場所での活動それ自体がローカルメディアとなることが、蔭山さんから事例とともに紹介されました。これらの事例紹介から、「メディアは人と人の思いや考えをのせた乗り物であること。」、「メディアはメッセージである。」、「メディアがコミュニケーションをつなぐことがある。」、「価値観や情報の読み替えであったり、メディア(方法論)によってつながること。」、「異なる立場の人がつながることによって生まれる地域のありかたについて考えること。」これらが重要な視点であることが伝えられました。

影山裕樹(かげやまゆうき)| 1982年、東京生まれ。編集者、文筆家、メディアコンサルタント。”まちを編集する出版社” 千十一編集室 代表。アート、カルチャー書の出版プロデュース、ウェブサイトや紙媒体の編集・制作、執筆活動の他、全国各地に広がる地域×クリエイティブ ワークショップ「LOCAL MEME Projects」の企画・運営、ウェブマガジン「EDIT LOCAL」の企画制作、オンラインコミュニティ「EDIT LOCAL LABORATORY」の企画運営など幅広く活動を行っている。

 

講座2『アーティストとして街にどう関わるか』

講座の二つ目として、アーティストとして自身の表現を媒介として、街にかかわること、社会のなかで表現者としてあることについて考えてきた増本泰斗さんに、ご自身のこれまでの活動とその考え方や姿勢などについて紹介いただきました。

増本さん自身が広島生まれであること、幼少期から続けているスポーツの体験、また京都にすみ、京丹後出身の奥様との結婚など、まずは個人が体験してきた物語がどのように自分の制作や表現に影響を与えているかが事例をもとに紹介されました。その後、海外でのアーティストによる社会実験や社会的な活動についてシアスター・ゲイツなど具体的な参考例をもとに紹介がありました。これらの活動事例の紹介において、一番強調されていたのが、アーティストによる実践は、社会運動そのものではなく、個別・具体的な思いや体験に紐づくことがおこなわれているのではないかということでした。その中で最近は、社会性や社会にとって意義のある活動のみを行うことを目指すことのあり方への危惧も示されていたように思われました。

増本泰斗(ますもと やすと))|広島生まれ。岡山出身。アーティストとして、国内外での展覧会やZINEの出版、パフォーマンス、ワークショップなど多岐にわたる芸術活動を行うほか、美術館や劇場、芸術文化施設などのWeb媒体でも多数のプロジェクトの企画・設計に携わっている。保存食labではアーティスティック・マネージャーとしてプロジェクトの屋台骨を支えている。

 

ワークショップ『ローカルメディアを考えるワークショップ』

本ワークショップは、「ローカル(ミーム)」と「メディア」のふたつの組み合わせから新しいローカルメディアを考えるというものでした。影山さんからの参考例が提示された後、まずは各参加者が、「ローカル」=各地域の資源について思いつくものをあげていくことから始められました。その後に、影山さんから「メディア」は、情報発信だけの手段ではなく、媒介する人をつなぐためのコミュニケーション手段であることが伝えたれたうえで、考えられる表現方法=「メディア」についてそれぞれが考える時間が設けられました。参加者からは「ローカル」の特徴として、由良川・雲海・元伊勢や鬼伝説・コインランドリー・鹿などがあげられ、「メディア」としては夜の祭りやYouTubeを用いた配信などがあげられました。地域の特性について表現するにあたり、地域資源とそれをどう表現するのかふたつの特性を考えるためのワークショップとなりました。

 

ワークショップ『課題を抽出し検討する』

1日目のまとめとして、先ほどのワークショップであがった資源やメディアの可能性、また参加者それぞれがすでに抱えている地域で活動することにおける課題や、今後やりたいことの発表などを行いました。このワークショップでは、「現状の課題を解決するためになにが必要か」もしくは「既存にはなく今後、こういうコト・モノがあるといい」という観点から、意見や希望、提案が参加者からあげられました。具体的には「人が気軽に集まれる場所がないこと」や、「芸術祭を実施したい」などがありました。

 

 

2日目

ワークショップ『企画立案実践ワークショップ』

2日目のワークショップでは、1日目に行われたワークショップ『ローカルメディアを考えるワークショップ』とそこで発見された課題と、地域の魅力や資源をもとに、来年度に実施することを想定したイベントの企画立案が講師のお二人と参加者によって行われました。

この地域の特性のひとつとしてあげられた「コインランドリー」、これを用いたイベントが開催できないかという意見から、その具体的な内容の検討が話されました。そこからさらに発展し、夜の花火大会に変わるイベントや芸術祭開催の可能性についての意見交換が行われました。話し合いを進めていくなかで、中丹地域の課題として、多年代や多様な人が集まれる“場”、交流できる“イベント”が少ないという課題が浮き彫りになりました。またイベントを実施するにあたっては、いかに一過性の行事やいっときの盛り上がりだけでない、継続的な取り組みを行うことができるのかについて、企画内容等の意見交換がされました。

 

ディスカッションとまとめ

2日間の講義とワークショップのまとめとして、本講座をきっかけにした、中丹地域における取り組みを継続していくにあたっては、講師と参加者が定期的に、そして自発的に集まってのイベントやワークショップの実施の必要性や、多様な人が集まり意見交換をしていくことができる場作りを通した実践について検討されました。

 

(記事執筆:朝重龍太(京都府地域アートマネージャー・中丹地域担当))