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[事業レポート]写真ワークショップ「大江の物語-変化へんげ する鬼たち-」

中丹地域|福知山市

古くから鬼伝説や神話が息づく福知山市大江町。地域の豊かな自然とともに育まれた鬼伝説をテーマに、カメラを通して地域の魅力を再発見する参加型アートプログラムとして、2025年夏に写真ワークショップを開催しました。参加者の皆さんの様子や、ワークショップを通して発見したことなど、大江在住の美術家であり、本プログラムに地域サポーターとして参加された新井厚子さんにレポートにまとめていただきました。

写真ワークショップ
「大江の物語 −変化へんげする鬼たち−」

イベント概要

カメラレクチャー講師|吉田亮人(写真家)
地域レクチャー講師|村上誠(日本の鬼の交流博物館館長)


地域ガイド|赤松武司(大江地域観光案内倶楽部会長ほか)
地域サポーター・レポート執筆|新井厚子(美術家)
カメラサポーター|TMD合同会社

コース概要

Ⅰ 元伊勢内宮コース①
日 時|2025年8月31日(日)13:00~17:00
参加者|小学生親子5組14名
撮影地|日本の鬼の交流博物館~元伊勢内宮皇大神社~大江駅周辺


Ⅱ 宮津街道コース
日 時|2025年9月6日(土)13:00~17:00
参加者|中学生以上一般18名
撮影地|日本の鬼の交流博物館~二瀬川渓流~新童子橋~宮津街道


Ⅲ 元伊勢内宮コース②
日 時|2025年9月13日(土)13:00~17:00
参加者|中学生以上一般18名
撮影地|日本の鬼の交流博物館~元伊勢内宮皇大神社

▼共通タイムスケジュール

 13:00    集合・挨拶(日本の鬼の交流博物館にて)
 13:10 ~  地域レクチャー
 13:30 ~  カメラレクチャー
 14:50 ~  バス移動
 15:00 頃~ 各所で撮影実習(コース別)
 16:00 頃~ バス移動
 16:30 頃~ ふりかえり(日本の鬼の交流博物館にて)
 17:00      終了

 

夏の終わり、まだ暑さの続く中、全3回の写真ワークショップが大江山の麓で開催された。
この地域は古くから街道を人が行き来し、鬼伝説が語られ、昭和には鉱山で賑わい歴史が層をなしている土地だ。山間に点在する集落には祠やお地蔵さんがそこかしこにあり、山に開いた風景から、米作り、炭焼や紙漉き、養蚕、お茶の生産など隅々まで人の営みが深く根付いていたことがうかがえる。今では静まり返った里山に、まるでバームクーヘンのように歴史が幾重にも重なっているように見える。そんな景色の中、ワークショップの賑わいとシャッターの音は、この地に刻まれた物語の断片を呼びおこしてくれるかもしれない。

写真ワークショップ時の大江の風景(筆者撮影)

ワークショップのスタートとなったのは「日本の鬼の交流博物館」(通称、鬼博)。涼しげな川の流れを背景にした研修室にはズラリと最新式のミラーレス一眼カメラが並び、これから始まるワークショップへの期待が高まる。

まず、村上誠館長から大江町の成り立ちや、鬼についてレクチャーがあり、地域の大まかな歴史を頭に入れる。続いて写真家・吉田亮人氏によるカメラレクチャーが行われ、カメラの扱い方から撮影時の視点や構図の工夫を学ぶ。

地域レクチャーの様子

カメラレクチャーの様子

 

さっそく参加者は館内に散らばって試し撮りをして、見慣れた風景もファインダーを通して思いがけない一面を写しとることができることを見せてくれる。

館内での試し撮り

館外での試し撮り

 

そして、いよいよバスで撮影現場に移動。歴史に詳しい地域ガイドの赤松武司氏がこの地の歴史や自然・風土について説明され、目の前の風景と地域の歴史がつながりを持ちはじめる。

第1回は元伊勢内宮皇大神社と大江駅周辺を巡るルート。小学生とその保護者向けの回で、亀岡市や京都市など遠方からの参加者も目立った。門前町の風情が残る集落から続く参道には古木の切り株、石段、御神木、蝉時雨の中の木もれ陽…視界に入り込んでくる被写体は無限にある。地面に張り付いて撮影するお母さん、見つけた虫に夢中の子ども、切り株にぐっと近づいて年輪を数えながらシャッターを切る親子。それぞれが自分の視点で、大江の風景と対話を始めていた。その後、大江駅周辺へ向かう。カメラを持つことで何の変哲もないまちの様子も新鮮に感じ、いつもと違う目が開いて、ファインダー越しの光景を写真に収める。

元伊勢内宮皇大神社の石段を撮影する参加者(筆者撮影)

小学生の参加者と対話する吉田氏

 

第2回は二瀬川渓流沿いの宮津街道を辿るコース。大きな岩の間の流れを見ながら渓流にかかる吊り橋を渡り、石畳の古道へと続く。村上館長が話された鬼の気配、そんな空気を感じられる古道だ。山の斜面から水辺からあちこちでシャッターの音が聞こえ、吉田氏は「見えないものを撮る、気になるものを何枚も撮ってみる」ことをアドバイスされ、参加者一人一人のカメラをのぞき込み対話をしてゆく。またキノコや植物を観察して参加者同士の交流も広がる。

二瀬川渓流沿いの散策道(筆者撮影)

思い思いにシャッターを切る参加者(筆者撮影)

 

第3回は再び元伊勢内宮コース。じっくりと被写体との対話を意識する時間が取られた。幅広い年齢層の参加者を迎えたせいか、同じルートでも1回目とはまた違った趣だ。吉田氏は、「物語を感じさせるような一枚、またシリーズで構成すること」なども提案され、高校の写真クラブで参加した生徒たちも、すぐに挑戦する。写真を撮り慣れた人も初めてカメラを持った人も、新しいことをどんどん試してゆく。

吉田氏と参加者

 

このワークショップは、高性能のカメラを使い、写真表現のコツを学ぶばかりではなく、様々な広がりがあった。地域の歴史や風習などを知るきっかけとなり、人々の営みに目を向け、日常に隠れた美しさを見つける楽しさを知った。そして、それぞれの感性でシャッターを切り、他の人の写真を見ることで、また新たな発見につながり、普段の価値観を越えた場での対話を生み出す。

大江駅周辺で撮影する参加者

 

私は大江で生まれ育ち、この辺りのことはわかっているつもりでいたが、今回、カメラを持って歩くことで、見過ごしていた風景がたくさんあったことに気づき、発見の連続であった。カメラのレンズというもう一つの目を通して、日常に潜んだものに光をあてる時、まわりの風景も違った表情を見せる。写真ワークショップ参加者が、この地で何を見て、何を感じ、その視線の集結で何が生まれてくるのか興味が尽きない。一枚、また一枚と撮られたイメージは、歴史が層をなす地面を耕し、物語を芽吹かせてくれるようだ。

夏のワークショップが終わり、いつもの景色に色を添え、また物語は始まる。

宮津街道から府道へ降りる道、撮影実習にて

(記事作成日|2025年10月1日)

 

記事執筆

新井 厚子(あらい あつこ)

美術家。福知山市大江町出身・在住。スペイン・バルセロナで立体、空間芸術を学び欧米や日本各地で地域性のあるテーマのもと参加型アートプロジェクトを多く制作。2015年頃に制作拠点を地元に移し、アートの視点から地域の文化を掘り起こすプロジェクトを継続的に行っている。福知山でアートスペース「シンマチサイト」を運営し、大江の文化イベント企画にも関わっている。 

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